次にデシジョン(決断)ですね。部下が提案を持ってきたら、「ここはこう直せ」「これはダメ」とすぐに判断をする。「ちょっと調べてから」「ヒアリングしてから」では間に合わない。そういう社会になってきているんですよ。たとえば衣服を買うときは、あちこち目移りした揚げ句に手にしたものではなく、一番最初に気に入ったものが本当はいい。この直観みたいなものが、ビジネスの世界でも大事なんです。
3つ目はエデュケーション(教育)。こう考えろ、とか、こんな本が面白いぞ、などと部下をどう教育するかを絶えず考える。簡単にいうと、自分が上司にしてもらいたくないことをするな、ということ。最悪なのは、数字だけ押し付けて、成功すると手柄は持っていく。失敗すると「おまえ、何やってる!」。20世紀なら通用したこういうやり方も、今後はそうはいきません。
かつて上司だった堤清二さん(現セゾン文化財団理事長)には、時間をかけて考えてもロクなものはできないということを学びました。30代と若かった堤さんはあれをやれ、これをやれともの凄い球をどんどん投げてきた。飛行船の研究をしてこい、と言われたときは驚きましたね(笑)。空中浮遊物を物流に使えないか、宣伝媒体に使えないか研究しろ、と。農業法人をつくれと言われたこともありました。
最初は空振りばかり。そのうちファールになり、何回かは当たるようになる。何もせずじっくり見送るのが一番ダメで、とにかく手を出して、多くの空振りやファウルを経て初めてヒットが生まれるんだということを部下に教えてくれたと思います。
20世紀の組織の手法に慣れた人、特に秀才はこうしたイノベーションが大の苦手。当たり前ですよ。そんな教育は受けてないんですから。しかし、これからはあらゆる業界で本当の競争が始まります。イノベーターが勝ち残っていく社会が、否応なしにやってくるでしょう。
1942年、京都府生まれ。65年、西武百貨店入社。マーケティング部兼営業開発部長などを経て、同百貨店宇都宮店次長。82年西武クレジット(現・クレディセゾン)に転籍。83年取締役、85年常務、2000年より現職。著書に『BQ』『勝つ人の考え方負ける人の考え方』『運とツキの法則』。
座右の銘・好きな言葉:勝つことにこだわる、タブーを持たない
座右の書・最近読んだ本:P・F・ドラッカー『マネジメント』、ゲイリー・ハメル『経営は何をすべきか』
尊敬する経営者・目標とする経営者:オリックス・宮内義彦会長、元アップルCEO・スティーブ・ジョブズ
私の健康法:親しい仲間と好きなことをして遊ぶ、ゴルフ、麻雀、ロックンロール