昨年5月、ホンダは二輪車の「スーパーカブ」の立体商標が認められたと発表した。商標登録は、模倣品などを防ぐために、商品やサービスの標識を登録することで独占的使用を認める制度。1996年の改正で立体的な形状も登録可能となった。 

模倣品は、立体商標でなくても、意匠登録や著作権、不正競争防止法でも防ぐことが可能だ。ただ、意匠の保護期間は20年、著作権は著作者の死後50年。不正競争防止法の形態模倣規制も、発売日から3年だ。一方、商標の保護期間は10年で、何度でも更新が可能。半永久的に権利を維持できるのが最大のメリットだ。

立体商標の権利を取得するには、2つのルートが考えられる。1つ目は、ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース人形のように広告物として登録するケース。これは、実際に広告物として使用されていれば、比較的認められやすい。

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立体商法として登録できるもの

2つ目のルートは、コカ・コーラの瓶のように商品や容器の形状を登録するケースだが、これはハードルが高い。知財に詳しい田中昌利弁護士は解説する。

「コカ・コーラの瓶の形状は、ドリンク容器の形状として予測できる範囲内。そのレベルで独占を認めると自由競争が阻害される恐れがある。一般には商品形状の特徴だけでは登録は簡単には認めらません」

では、コカ・コーラの瓶はなぜ登録できたのか。

「一定の期間、一定の市場規模で販売された実績などにより、その形状で消費者が誰の商品か識別できてはじめて、立体商標として登録が可能。コカ・コーラの瓶の商標は、『販売実績や広告宣伝の積み重ねによって識別力を獲得している』と判断されたのです」(田中弁護士)

スーパーカブもバイクとして逸脱した立体形状をしているわけではないが、1958年販売開始という長い歴史や生産累計8700万台超という実績から、「消費者は形を見ればどこの商品かわかる」と判断されたのだ。