古物店「まんだらけ」から人形が万引された事件が賛否両論を巻き起こした。同社は防犯カメラ画像をHPに掲載し、「返しに来ない場合は顔写真のモザイクを外して公開します」と犯人に警告。これをめぐり、「やりすぎだ」「苦肉の策だ」と議論が白熱した。結局、店側は公開を中止した。
では、万引犯の顔写真の公開は、法的にはどうなのか。
まず「名誉毀損にあたるのでは」という点について。名誉毀損は事実の有無にかかわらず成立することを考えると、たしかに今回のケースは名誉毀損になりうるだろう。
ただ、教科書的に法律上の要件を満たしても、実際に立件されるかどうかは別だ。長谷川裕雅弁護士は、次のように指摘する。
「そもそも名誉毀損は、立件されづらい犯罪です。たとえ名誉毀損の要件を満たしていても、窃盗の被害者が加害者の名誉を毀損した場合は、まず警察が事件として取り上げない可能性も高い」
これまでも万引被害にあった店が犯人の顔写真を公開するケースはあった。1990年代には、福島県の書店が万引犯の防犯カメラ映像を販売。群馬県のディスカウント店や兵庫県のコンビニは写真を店頭に貼りだした。昨年も、大阪の鮮魚店が万引犯に「私は万引しました」というプラカードを持たせて撮影し、写真を店頭に貼りつけていたことが報道された。今回より過激な対応も見受けられるが、「こうした自衛策が立件された話は聞いたことがない」(長谷川弁護士、以下同)。