では、民事で損害賠償請求される可能性はどうか。
「窃盗犯が店側を提訴すれば、注目を集めて報道され、犯罪に手を染めた事実が余計に拡散します。これは自分で自分の首を絞めるようなもの。デメリットを考えると、訴訟に発展するリスクは低い」
法的なリスクを、さらに下げる方法もある。名誉毀損罪は、実は(1)「公共の利害に関する事実である」、(2)「目的がもっぱら公益のためである」、(3)「真実であることの証明がある」という条件をすべて満たせば罪にはならない。「今回は『返さないとネットで顔写真を公開する』といったので、目的は盗品を取り戻すこと、つまり私益のためだと判断されるでしょう。しかし、『万引撲滅』とうたえば、(2)の公益目的と解釈する余地が生まれて、名誉毀損が成立するリスクを減らせます」
また、ネットでの顔写真公開には倫理的な問題もある。ネットに掲載された情報は、地域を越えて拡散して半永久的に残ってしまう。その結果、犯人は自分が犯した罪以上の過剰な社会的制裁を受けることになりかねない。
つまり、まんだらけのケースでは、「返さないと公開する」とした私益目的の側面に加えて、「ネットで公開する」とした私的制裁の側面が主に問題だったといえるだろう。逆に言えば、これらの点に気を付ければ、万引犯の顔写真を公開しても法的なリスクは小さいといえる。