昨年起きたマクドナルドの鶏肉期限切れ問題で、ショックを受けた人は多かっただろう。「問題の鶏肉を使った店舗を公表しないのか」という質問に、日本マクドナルドHDのサラ・エル・カサノバ社長は「期限切れ鶏肉が日本向けだったという事実は確認されていない」、つまり、問題の鶏肉を国内で提供したかどうかわからないと、当時回答した。

消費者に、自分が食べた食品の原産地を知る権利はないのか。この問題については、スーパーなどで販売される生鮮食品、加工食品と、飲食店で提供される料理を分けて考える必要がある。食品表示に詳しい石川直基弁護士は、次のように解説する。

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食品表示に関係する法律 ※食品衛生法、JAS法、健康増進法を統合して成立。今年施行予定。

「スーパーで生鮮食品、加工食品を手に取ると、原産地や製造者名が表示されています。これは食品衛生法やJAS法による表示義務があるため。一方、飲食店で提供される料理は、これらの法律の適用外で、原産地などの表示義務はありません。今年施行予定の食品表示法でもルール変更の予定はありません」

飲食店での表示が野放しになっているわけではない。たとえば安い肉をブランド肉と偽るなどウソの表示をすれば景品表示法に違反する。ただ、表示しなくても問題はない。

食品の生産・輸入から消費者に提供されるまでの取引を記録するトレーサビリティーの確保を求める法律もあり、飲食店に産地情報の伝達を課している場合もある。

しかし、現時点で対象となっているのは、BSE問題があった牛肉と、事故米問題が起きた米のみ。鶏肉を含め、一般食品については法制化されていないため、提供する肉がどこで生産、加工された肉かわからなくても問題はない。カサノバ社長の発言も、法的には問題がないのだ。