なぜ削除されてもファクスが送られ続けるのか

こういう大状況から見ると、サイバーリテラシー・プリンシプル(13)<削除すべきデータを「削除」フォルダーに「保存」しない>というのは、重箱の隅をつつくようなささいな話だと思われるだろう。しかし、本来なら削除すべきデータを「削除」フォルダーに「保存」して、それを他の用途に利用することは慎むべきである。

私は自分のファクス番号を顧客リストから完全に削除してもらうために3年もかかった。企業からのお知らせがまだファクスで送られてきた10年以上前の話だが、いったんデジタル化されたデータを削除してもらうのがいかに大変かという事例として紹介しておこう。

発端は、私がまだ新聞社に勤務中、東京ブックフェアの取材に行って「ブックフェアに関する資料のファクス配信を希望する」手続きをとったことである。それ以来、関連ニュースがファクスに届けられるようになり、退社後もそれは続き、しだいに他の案内も届くようになった。

ある日、自宅に戻ったらファクスが用紙切れだった。紙を補充したとたん、メガネ展示会関連の資料が次々に打ち出されたので、さすがにうんざりして、記載されている番号に電話、「私の番号を送付先リストから削除するように」頼んだ。相手は「失礼しました。さっそく手続きをとります」と丁寧な応対だったが、ファクスは止まらなかった。同じようなやりとりが3度ほどあって、たしか4度目ぐらいにやっとファクスが来なくなった。