矛盾を矛盾のまま飲みこむ

いま、ぼくたちが展開している「REPUL」のサービスは、「成果保証オンラインダイエット家庭教師」と銘打っています。身長・体重・性別・年齢をデータベースに放り込むと、2カ月で痩せられる体重が出る。その数値を保証して、サービスを提供しています。

筋肉が衰えたり太ったり身体が固くなったり姿勢が崩れたりするのは、正しい運動習慣と栄養に関する知識がないことが原因なんです。世の中に対してこの分野の正しい知識を普及し、それぞれの人の身体の健康状態にあわせたプログラムを用意していく。いままでジムやクラブで対面の形でやっていたことを、オンライン上で実現するイメージですね。

自分で会社を始めてみて思うようになったのは、マズローの欲求5段階説というのは本当なんだな、ってことです。人間の欲求の最も上にあるのが自己実現で、その1つ下の段階には認知欲求があるってマズローは言いますよね。

ぼくらのようなベンチャー起業家が社会のためになる事業をしたいと強く思うのは、それが今の世の中に残されたわかりやすい自己実現の方法に見えるからかもしれません。人から認められたい、褒められたい――そんな認知欲求は、経営者になってまともに事業を進めていればすぐに満たされてしまいます。それを満たしたあとは、あとに残るのは世の中に何かを残したい、生きた証を残したい、という気持ちなんですよね。

ヘルスケアの世界には、まだまだイノベーションの種が眠っています。この領域はもっとも変えないといけない領域にも関わらず、です。ぼくらのオフィスがある東京都のこの創業支援室にはバイオやヘルスケアの会社ばかりが入っていますが、平均年齢は40代後半。ぼくが過去を遡っても最年少で、現在も若い会社はありません。このタイミングを逃さずに、ヘルスケアの領域で人の役に立つサービスをつくって、一番の企業になりたい。そうした使命感を持って働いています。

そのためには矛盾を矛盾のまま飲みこんでいくような気合いが必要なんです。でも、それが面白い。魅力的なサービスをつくるには仲間が必要で、仲間を得るためには魅力的なサービスが必要――。お金がなければサービスはつくれないけれど、お金を得るにはサービスが必要――。目の前にあるパラドクスを力づくで越えていく道程で得られる成長実感。これは一度体験するとなかなかやめられないもんですね。

FiNC:ヘルスケアの領域でサービス開発、遺伝子検査・体内検査事業などを行う。主力サービスはREPUL「オンラインダイエット家庭教師」、REPUL「オンラインワークス」。社員数20人。現在、東京都の創業支援施設「ライフサイエンスインキュベーションセンター」にオフィスを構える。
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