「覚悟を決めたんで」
メンバーがすべて女子高生の「鯖江市役所JK課」。僕がこの企画を提案し、最初の報道で話題になった直後、ある専門家からこんな指摘がありました。
リスクの高い大げさなPR企画だけ打ち上げて、田舎の小さなまちがそれ以上のベネフィットを出せるとは思えない。女子高生は未成年者であり、まったくもって話にならないはず。
僕はなんとも悲しい気持ちになりながら、ここに現代社会の人材育成や地域づくり、組織開発における問題の本質が詰まっているのだと痛感しました。そして、苛立つ気持ちを抑え、全ては彼女たちが明らかにしてくれると信じて、今日まで活動に取り組んできました。今回の記事は、それに一矢報いたいという思いで書いたものです。
4月に行われた記者会見での様子や、これまでの活動実績については前回書きましたが(連載第3回 http://president.jp/articles/-/12583 を参照)、女子高生たちを“「JK」のまま”まちづくりの主役にするという今回の取り組みはかなり実験的であり、僕たちの真意がなかなか正しく理解してもらえず、反対意見や批判、バッシングもたくさんありました。
そこで生じた課題の一つは、親や学校の反対です。スタートアップ記者会見を開くにあたっては、女子高生の顔が広くネットメディアなどで報道されるのはいかがなものか、と懸念の声が挙がりました。ただ、「本人の顔がメディアでどうのこうの」と反対するのは、ほとんどがプロジェクトに参加していない高校生の保護者や、地域住民でした。「周囲」という謎の勢力によって、当事者不在の議論が激しく燃え上がるのです。
また、学校の先生の判断も大きく分かれました。JK課の取り組みを「面白い」と評価して応援してくれる先生もいれば、「よく分からない“怪しい”活動に参加するのは危険だ」「大々的に表に立って大人や社会とやりあっていくようなことを、それまで素人だった高校生にできるはずがない」と、ずいぶん反対される先生もいました。後者の場合、「心配している」と言えば聞こえはいいですが、女子高生たちを「子ども」だと一方的に断定してしまっているのだと思います。
その後、牧野百男市長や市の職員が各校の校長や指導教員に会って話し合ったり、保護者説明会を開いたりするなどして、理解が得られるまで関係各所に丁寧に説得し続けてくれました。それでようやくJK課の正式発足に至ったのですが、このように書くと、大人たちがお膳立てした「大人の企画」のように思えるかもしれませんが、この企画を実現させたのは、女子高生本人たちの強い覚悟とコミットメントでした。
牧野市長が彼女たちに、「えらい騒ぎになったのに、よく残ってくれたね」と声をかけた時、メンバーの一人がこう言いました。「私は、覚悟を決めたんで」と。僕はこの言葉を聞いて、本当に驚き、感動しました。そして、そんな彼女たちの態度が、周りの大人たちを本気にさせていきました。