亜熱帯から氷雪気候までそろう国
姿を変えつつあるバクーの街は、映像の舞台としても注目を集めている。朝日新聞によると、アゼルバイジャンは今、国を挙げて外国映画やドラマの撮影の誘致に力を入れているという。同国映画庁の集計では、ここ2年で外国作品の大規模な撮影は10本ほどに上る。
こうした中で大規模に行われたのが、日本の『VIVANT』の2カ月に及ぶ現地ロケだった。映画庁のラシャド・アジゾフ長官は、ロケ地としての魅力の一つに多様な気候を挙げる。海辺の平野から4000m級の山岳地帯まで、亜熱帯から氷雪気候までが国内にそろう。アジゾフ氏は「バクーは数分で、ハイテク都市から旧市街の裏通りに迷い込む」とも話しており、昔ながらの面影もなお魅力のうちだ。
ガーディアン紙が2024年に報じたように、アゼルバイジャンの輸出はいまも化石燃料が9割を占める。それでも、石油以外の収入源が少しずつ育ってきている。
パキスタンの研究機関「共有未来共同体パキスタン研究センター」のハリド・タイムール・アクラム所長は、国営アゼルタグ通信への寄稿で、観光業を多角化戦略の「礎」と位置づける。
同国の観光庁も10月、TBSとの継続的な協力の一環として、『VIVANT』第2シーズンのポストプロダクション(撮影後の制作作業)を支援したと発表した。ロケの誘致も、石油以外の稼ぎを育てる取り組みの一つと見ることができそうだ。
10年ぶりに訪れた日本人記者へのもてなし
親日国としても知られるアゼルバイジャンは、いま日本からの訪問者を歓迎している。在アゼルバイジャン日本大使館によると、今年7月から1年間、日本人は1回30日以内、3回までならビザなしで入国できることになった。
かつて交易で栄えた、古都シェキ。『VIVANT』でもストーリーの山場を担うロケ地となったこの地の隊商宿・キャラバンサライは、シルクロードを行き交った数多の商人たちが泊まった石造りの宿だ。今も実際に宿泊することができる。
アゼルバイジャンへの10年ぶりの訪問でシェキへ向かう途中、冒頭で触れた朝日新聞の中川支局長は、思いがけないもてなしを受けたという。立ち寄ったガソリンスタンドでは年配の男性から一輪のバラを手渡され、コーヒーを買ったドライブインでは店員に「ごちそうしたい」と何度も言われた。アゼルバイジャンには「強権体制」のイメージもある。それでも支局長は「いい意味で驚かされることが多かった」と書いている。
古今東西が交わるアゼルバイジャンでは、多様な文化と温かな人間味が育まれてきた。石油頼みからの転換を探るこの国にとって、日本の人気ドラマは、多彩な素顔を世界に知らせる格好の舞台でもあったと考えられる。海外ロケによる圧倒的な映像美と驚きのストーリー展開で魅せるドラマ『VIVANT』の持ち味を、「火の国」の厚みのある表情がさらに高めていると言えるだろう。
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