インフルエンザという難敵

そして、年末の大学駅伝チームにとって避けて通れないのが、感染症による戦力低下だ。

2024年の箱根駅伝で優勝した青学大は、大会前に深刻な危機に直面していた。原晋監督によれば、11月下旬から12月初旬にかけて、主力選手を含む多数の部員がインフルエンザに罹患したという。十分な練習を積めない状況に陥ったものの、年末までに立て直して箱根を制した。

一方、同じ大会では國學院大と中大も12月に集団感染の影響を受けた。特に中大は直前まで体調不良者が続出し、当初想定していた戦力を十分に発揮できなかった。

早大も苦い経験がある。2024年の箱根駅伝では、前年のクリスマス前後に6区を予定していた北村光と主力の伊藤大志が相次いでインフルエンザを発症した。花田監督は当初の総合5位以内という目標を下方修正し、シード権獲得を目指す戦いを余儀なくされた。

別の年だが、優勝候補だった駒大がノロウィルスで主力選手を起用できずに、優勝を逃したこともあった。

箱根では10人が走るため、主力選手が1人欠けるだけでも区間配置に大きな影響が出る。年末に体調を崩せば、回復しても十分な練習や調整ができない可能性がある。だからこそ、花田監督が強調する「16人全員が万全の状態で臨む」という目標には、大きな意味がある。

どれほど強力な選手をそろえても、スタートラインに万全の状態で立てなければ、持っている力を発揮できないのだ。

本番当日に控える「大敵」

また、本番当日は自然条件も大敵となる。

2013年の箱根駅伝では、強烈な向かい風が選手たちを苦しめた。前年19位に沈んだ日本体育大が、悪条件のなかで粘り強さを発揮し、30年ぶり10度目の総合優勝を飾った。2006年の箱根駅伝でも、首位を走っていた順大が8区で思わぬアクシデントに見舞われた。主将の難波祐樹が脱水症状で失速し、首位から後退。最後は、全日本11位だった亜細亜大が初優勝を成し遂げる番狂わせとなった。

優勝候補が万全に準備していても、天候や選手の体調によってレース展開ががらっと変わる。それが箱根駅伝の怖さでもある。

一方で、例年、全日本から箱根に向けて急激にチーム力を高める大学もある。

その代表格が青学大だ。直近12大会で9度の優勝を達成しているが、その間、全日本大学駅伝で優勝したのは2度だけだ。箱根に向けてトレーニングを積み重ねる強化プランが確立されていることに加え、選手たちは先輩たちの成功体験を間近で見てきた。箱根の距離をどう走り、どのように勝負すれば勝てるのか。その経験がチーム内で受け継がれていることも強みだろう。

もちろん、現時点で早大が箱根駅伝の優勝候補筆頭であることに異論をはさむ人はいない。

全日本では2位以下を圧倒しただけでなく、1年生から4年生まで幅広い学年が活躍。工藤慎作という経験豊富な山上りのエースもいる。

青学、駒澤、中央、創価の追い上げ

それでも、箱根では何が起こるかわからない。

國學院大は距離の長さと選手層を生かした戦いを模索し、青学大は箱根での経験値と調整力を武器に逆襲を狙う。駒大や中大にも、全日本の結果だけでは測れない底力がある。また全日本3位の創価大も秘めたパワーがある。

早大が3冠を達成するためには、出雲、全日本で見せたスピードを維持するだけでは不十分だ。1年生トリオの長距離への対応、10区間を走り切る選手層、故障や感染症への備え。そして何より、2冠の高揚感を切り替え、箱根に向けて再び挑戦者の気持ちを取り戻せるか。

学生駅伝3冠を達成した2010年度から16年。早大は再び歴史を動かそうとしている。だが、過去の事例が示しているように、出雲と全日本の2冠は箱根優勝の約束手形ではない。

大切なのは、1月2、3日に結果を出すことだ。

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