来年の箱根駅伝に出場する全20大学のうち残る10大学を決める予選会が先日開催された。スポーツライターの酒井政人さんは「予選会出場45校の中でも、79年連続の箱根を決めた大学の“集団走”に注目が集まった」という――。

箱根駅伝予選会で「逆転」して79年連続

これが伝統の力というものかもしれない。

10月17日に東京・立川市で行われた第103回箱根駅伝予選会。45校の各12人の選手がハーフマラソン(21.0975km)を走り、合計タイムの早い10校が箱根駅伝の本選出場権を獲得する。

10km地点で、本大会圏外である13位だったが、そこから粘り強く順位を上げ、15km地点で10位に浮上。最終的には10時間39分52秒の9位に入り、「箱根」を手繰り寄せた――。それは日本体育大学だ。

実は、昨年の予選会も同じような展開だった。10km地点では19位と出遅れながら、後半に驚異的な追い上げを見せて9位で通過した。2年連続で前半の劣勢を覆したのだ。

これで日体大の箱根駅伝出場は79年連続79回目。1949年の初出場から続く記録は、現在継続中の大学では最長となる。歴代でも中大の87年連続に次ぐ2位だ。

圧倒的な戦力を持ってないのに強いワケ

ただし、日体大が圧倒的な戦力を持っていたわけではない。

昨年は強力な4年生たちがチームを支えたが、その主力が卒業。今季は絶対的なエースが不在で、戦力ダウンがささやかれていた。さらに予選会では、主将の吉田黎大(4年)が故障で欠場している。

それでも、なぜ日体大はここぞの場面で負けなかったのか。

玉城良二駅伝監督の指導方針と選手たちの取り組みを取材すると、ビジネスシーンにも通じる5つの特徴が浮かび上がってきた。

① 個人の能力よりも「チーム全体の成果」を優先する

日体大の最大の武器は、伝統的な「集団走」だ。箱根駅伝予選会は、前述したように上位10人の合計タイムで順位を競う。1人がどれほど速くても、残りの選手が失速すれば本大会には進めない。

そこで日体大は、個々の選手がリスクを負って好タイムを狙うのではなく、あらかじめ決めたペースで走り、終盤まで余力を残す戦略を採用している。

今季も一部の選手を自由なペースで走らせる一方、多くの選手が集団を形成。レース中盤まで慎重に進め、最後の数kmで力を発揮した。重要なのは、全員が目立つ走りをする必要はないということだ。

企業でも、個人の突出した成果が必ずしも部署全体の成功につながるとは限らない。

日体大の集団走は、個人の能力を最大限に発揮させることより、全員が一定の水準を維持し、チームとして最良の結果を出すことを重視している。組織全体で成果を上げるため、チームの「底上げ」を重視している。