② 不測の事態に備え「特定の人に依存しない」
今季の日体大は、チームの中心だった吉田主将が予選会に出場できなかった。一般的に、主将や中心選手の離脱はチームに大きな影響を与えるが、「穴」をチーム全体で埋めた。
吉田が担うはずだった役割を他の選手が果たし、集団走を成立させたのだ。玉城監督が重視しているのは、特定の選手だけにチームを背負わせないこと。これは企業のマネジメントにも共通するかもしれない。
優秀な社員が異動・休職・退職することで業務が回らなくなるケースがある。仕事の属人化は、短期的には効率的に見えても、長期的には組織の弱点になる恐れがある。
日体大の場合、主将が不在でも、他の選手たちが自分の役割を理解して行動できた。組織を強くするためには、優秀なリーダーを育てることに加え、そのリーダーがいなくても機能する仕組みを整えていたのだ。
③ 現場に判断を任せて「自律的な組織」をつくる
日体大のチーム運営で興味深いのは、選手たちの自主性を尊重していることだ。ザ・体育会で上の命令は絶対というイメージを持つ人もいる日体大だが、玉城監督によると、予選会の出走メンバーについても、まず学生たちが原案をつくるという。
監督が一方的にすべてを決めるのではなく、選手自身がチームの現状を把握し、誰が走るべきかを考える機会を設けているのだ。
日々のミーティングでも選手同士が話し合いを重ねている。こうした取り組みは、集団走にも生かされている。レース中は監督が常に指示を出せるわけではない。選手自身が体調や周囲の動きを判断しながら、設定したペースを守らなければならない。つまり、日頃から自分たちで考える習慣がなければ、本番で自律的に行動することは難しい。
企業でも上司が細かな判断まで指示する組織は、平常時には安定しているように見えるものの、想定外の問題が発生すると、現場の判断が遅れやすい。反対に、部下が仕事の目的や優先順位を理解し、自分で判断できる組織は変化への対応力が高くなる。
監督が戦略や基本方針を示し、その範囲で選手が考えて動く。日体大のチーム運営は、責任者が方向性を定め、実行段階では現場の主体性を引き出すマネジメントの一例といえる。

