九大卒の29歳はなぜこれほど叩かれるのか

天下に醜態を晒し続ける福岡県議会の実態。それとは裏腹に、福岡を中心とした九州経済は活況を呈している。東京を中心とした経済活動とは明らかに違う別のアジアを明確に視野に入れた経済圏が誕生しようともしている。

そうした中、ベンチャー企業の誘致にも積極的で、頑迷な保守地盤に新風を送り続けてきた高島宗一郎福岡市長の後任を競う福岡市長選挙が11月15日に行われる。10人以上が立候補する大混戦が予想されている市長選挙にあって最年少候補者が29歳の佐々木彩乃だ。

佐々木彩乃氏
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佐々木彩乃氏

その佐々木が福岡市長選への立候補を表明するや、ネット上で佐々木は炎上する。

“佐々木は中国のスパイだ”“佐々木は怪しい”“佐々木は中国共産党と通じている”

こんな根も葉もない噂が飛びかった。そればかりか、佐々木への誹謗中傷は家族にまで及び、面識のない人物から身体的な危害を受け、中には殺害予告など脅迫めいた言葉を送りつける者までが現れる。

こうした誹謗中傷の原因となったのが、佐々木が九州大学を卒業後、中国の清華大学(シュワルツマンスカラーズプログラム)に留学したためだった。オンライン取材で留学理由を端的に聞くと、

「きっかけは第一次トランプ政権に遡ります」

佐々木が九州大学を卒業したのは2020年。その在学期間は彼女が言及した第一次トランプ政権(2017年から2021年)とほぼ重なる。

アメリカがそれほど恐れる“虎”を知らない

第一次トランプ政権は公然と中国封じ込めに動き、両国の関係は極度に緊張した。軍事領域とともにトランプ政権が狙いをつけたのは先端技術分野だった。軍事と密接に関係する先端技術は国の命運を握る極めて重要な要素になっていたからだ。

それを象徴する事件が起きる。トランプ政権による華為技術(ファーウェイ)創業者の娘でCFO(最高財務責任者)である孟晩舟の逮捕だった(2018年)。容疑は米国が制裁を課しているイランへの違法な輸出だった。身柄拘束はおよそ3年にも及んだ。

米国、中国という覇権国の激しい激突を見ながら佐々木はこんな思いにとらわれる。大学生である自分は、日米学生会議などにも積極的に参加し、米国を学ぶためにかなりの時間を費やしてきている。その姿勢に変わりはない。けれども、米国があれほどまでに牙を剥く、いわば“大きな虎”のような存在の中国が日本の真横にいる。

福岡市で学生生活を送る自分にとっては、中国はそれこそ手の届くような近さだ。そして、ハタと気づく。世界の命運の片方を握るかもしれないこの“大きな虎”のことを自分は何を知っているのだろうか、と。政治的な決断はどういうプロセスなのか? どういった人々が決断するのか? 中国共産党と一般庶民との関係はどうなのか……。