全額奨学金で清華大へ

佐々木は、日本の真横にいる“大きな虎”のことを何も知らない自分に気づき愕然とする。知らない国と対峙することほど怖いものはない。そう思い立ち取った行動が中国への留学だった。挑戦した結果、清華大学シュワルツマン・スカラーズプログラムに選ばれた。未来の指導者を育成する目的で期限は1年、全額奨学金の修士プログラムである。2020年2月3日付九州大学のHPにも『4年生が清華大学シュワルツマン・スカラーズに選出』と誇らしげに掲載されている。

清華大学、そしてシュワルツマンについて少し説明をしておこう。ちなみに、シュワルツマンは、現在、日本経済新聞の名物コラム『私の履歴書』で連載中であり、そちらも参考にしてもらってもいいかもしれない。

清華大学はいうまでもなく、北京大学と並ぶ中国最高学府の1つ。卒業生には中国共産党国家主席を務めた胡錦濤、現在その地位についている習近平、朱鎔基らがいる。そして、プログラムに自らの名前を冠している“シュワルツマン”とは、世界最大の投資ファンドとも言われる「ブラックストーン」を創設した1人、スティーブン・シュワルツマンのことだ。

ソニー出井氏、SB孫氏も選ばれた「顧問委員会」

清華大学とシュワルツマンとの関係は、およそ26年前に遡る。

改革・開放を唱えた中国の最高実力者、鄧小平からその路線を引き継いだ朱鎔基(当時首相)は中国がWTO(世界貿易機関)に加盟する前年の2000年、母校、清華大学に1つの委員会を作る。それが、「清華大学経済管理学院」に設けられた「顧問委員会」。自由経済という未知の領域に突入する中国の、主に米国との窓口を担うために設立されたのが「顧問委員会」だった。

初代委員長には米投資銀行ゴールドマン・サックス証券会長兼CEO、ヘンリー・ポールソンが選ばれた。メンバーには、現在JPモルガン・チェース会長のジェイミー・ダイモン、世界的な投資ファンド「ブラックストーン」創設者の1人、スティーブン・シュワルツマン、GM(ゼネラル・モータース)社長、リック・ワゴナー、その他、ロッキード・マーティン、ウオルト・ディズニー……、米国の錚々たる企業のトップが名を連ねた。

その中にあって、当時アジアから唯一、選ばれたのがソニー会長、出井伸之だった。ちなみに、出井は2017年にソフトバンクの孫正義が選ばれるまで日本人としてただ一人ずっと選ばれ続けた。

今も同委員会の委員であるスティーブン・シュワルツマンが私財およそ1億ドルを寄付し、創設されたのが「清華大学シュワルツマン・スカラーズ」だ。

清華大学
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