④ 戦力を客観視し「勝てる戦略」を選択する
日体大は、突出したエースがいないというチームの現状を理解していた。そこで、レースプランにも工夫を凝らした。序盤から強豪校と競り合うのではなく、終盤まで崩れない走りを徹底したのだ。
10km地点で13位という順位は、到底順調なレース展開とはいえない。しかし、日体大にとって重要なのは途中順位ではなく、21.0975kmを走り終えた時点で10位以内に入ること。昨年は10km地点の19位から9位、今年は13位から9位。2年連続で同じ方向性の戦略が結果につながった。再現性のあるプランを全選手が理解し、実践したということだろう。
中小企業が大手と同じ戦い方をしても勝ち目はない。自分たちに何ができて、何ができないのか。それを正しく把握したうえで、限られた経営資源をどこに投入するかを決める。日体大は、突出したエースがいないという戦力上の弱点を、集団走という組織的な戦い方で補った。
⑤ 実績を「重圧」ではなく「財産」に変える
日体大が今回の予選会で守った79年連続出場という記録は、並大抵のものではない。それは選手も重々承知していて、「自分たちの代で途切れさせてはいけない」というプレッシャーがかかる。玉城監督は、その重圧を「選手たちに背負わせたくなかった」という。
「やっぱり毎年毎年の(別の)チームですから」
指揮官は、連続出場を「大学としての財産」と位置づける一方、選手たちには目の前の大会に集中してほしいと考えている。
こうした考え方をする企業もあるだろう。老舗企業などは過去の成功体験が強みになる一方、「同じやり方で通用する」という思い込みが生まれる可能性がある。それで結果が出なければ、過去の実績は誇りではなく、心理的な負担に変わる。
玉城監督は、伝統を大切にしながらも、それを現役選手への過度な要求には結びつけない。過去から受け継いだものを尊重しつつ、今いるメンバーに合った戦い方を選ぶ。その姿勢こそ、長く組織をハイレベルで維持するうえで重要なのではないだろうか。
強い組織は「毎年つくり直す」ことで伝統を守る
以上、5つのポイントからわかることは、チーム(組織)がまさしく襷のように部員の中で長く大切に受け継いできた価値観を大事にしつつ、その時々に持つ人材を、状況に合わせて最大化・最適化していくことだ。
特別なスターがいなくても、組織として勝負できるということを実証した日体大。79年連続出場という偉業は、伝統を守ることと、チームを毎年つくり直すことが決して矛盾しないと教えてくれた。
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