スーパー1年生の「令和の三羽ガラス」などによる活躍で出雲・全日本駅伝を制した早稲田大学。3大駅伝の最後の関門、箱根でも優勝して3冠となるか注目されている。スポーツライターの酒井政人さんは「下馬評ではワセダが独走するということになっているが、過去には多くの『番狂わせ』も生まれている」という――。

箱根も制してワセダは3冠を達成できるのか

大学駅伝界に“早稲田旋風”が吹き荒れている。

10月12日の出雲駅伝で16年ぶりの優勝を飾った早稲田大は、11月1日の全日本大学駅伝でも圧倒的な強さを見せた。5時間3分31秒の大会新記録で16年ぶり6度目の優勝。従来の記録を3分16秒も更新し、2位の國學院大に3分34秒という大差をつけたのだ。

「令和の三羽ガラス」と呼ばれる本田桜二郎、増子陽太、新妻遼己の1年生トリオが1~3区を担当。増子と新妻が区間新記録を樹立すると、5区の鈴木琉胤(2年)も区間新。最終8区の工藤慎作(4年)まで、8人全員が区間4位以内という驚異的な走りだった。

MVPの早大・新妻遼己は3区を走り3のポーズ(カメラ・太田 和樹)=2026年11月1日、三重県伊勢市
写真=スポーツ報知/共同通信イメージズ
MVPの早大・新妻遼己は3区を走り3のポーズ(カメラ・太田 和樹)=2026年11月1日、三重県伊勢市

その強さにライバル校の指揮官たちも脱帽した。中央大の藤原正和駅伝監督は「もう完全な一強ですね」と語り、駒沢大の藤田敦史監督も「あれを並べられたら、往路は圧倒的な差で行かれちゃう」と警戒。國學院大の前田康弘監督は「完敗、完敗です」と認めた。

もはや、2027年1月の箱根駅伝でも早大が独走するのではないか。そんな雰囲気が漂い始めている。

しかし、大学駅伝の歴史を振り返ると、出雲と全日本で連勝したチームが、箱根で優勝を逃した事例は少なくない。秋の2大会を制したチームだからこそ、年末に向けて難しい状況に置かれる場合もあるのだ。

2冠を達成しながら箱根で敗れたチーム

出雲駅伝が始まった1989年度以降、学生駅伝3冠を成し遂げたのは、1990年度の大東文化大、2000年度の順天堂大、2010年度の早大、2016年度の青山学院大、2022年度の駒大の全5チームだ。

一方、出雲と全日本を制しながら3冠を逃したのは、1998年度・2013年度・2023年度の駒大、2009年度の日大、2018年度の青学大、2024年度の國學院大の全6チームになる。

なかでも箱根駅伝でダントツのV候補だったのが2023年度の駒大だ。

鈴木芽吹、篠原倖太朗、佐藤圭汰らエース級を擁し、出雲と全日本では他校を寄せつけなかった。2年連続の3冠という史上初の偉業に王手をかけて、2024年1月の第100回箱根駅伝に臨んだ。

駒大は1区の篠原が首位発進し、2区の鈴木も好走。トップで3区の佐藤にタスキをつないだ。佐藤は出雲2区で区間賞を獲得し、全日本2区でも区間賞・区間新記録を樹立したスピードランナーだ。

ところが、誰も予想しなかった事態が起こる。

箱根では青学大の太田蒼生に逆転を許し、その後も差を広げられた。駒大は最終的に総合2位。秋の2冠を独走で達成した強豪が、箱根では主導権を奪われてしまったのだ。

過去の実績を数字で見ると、出雲と全日本を連勝した11例のうち、箱根でも勝ったのは5例。3冠達成率は約45%にとどまる。

【図表1】学生駅伝3冠に挑んだチーム(1989年度以降)