追う数字を一つにして迷いをなくす
私が本書で提唱するのは「顧客の数」だけを指標にしよう、ということです。つまり、KPIを「顧客数」だけにしよう、という提案です。増えすぎたカギを1本だけにしようという話です。
ここで強調しておきたいのは「たった一つの指標を追い求めることで、ビジネスが極めてシンプルになる」ということです。
「顧客の数だけ見る」という方針でビジネスが根本から変わり、成長を続けている会社があります。仙台市にある「エイチ・ドライブ」。主に自動車販売や車検・整備を手がける会社です。社長の小山実さんが父親から店を継いだのは2004年。当時のエイチ・ドライブはごく一般的なカーディーラー、「新車の販売をして儲ける企業」でした。
しかし、新車の販売数はどうしても、メーカーが作った製品の良し悪しに左右されます。また、買い替えまでどんなに短くても数年はかかります。そのため、常に新しいお客さんを開拓しなくてはなりません。つまり、いつまでたっても経営が安定しない。
それはつまり、いつまでたっても不安から解放されない。この状況に危機感を抱いた小山さんは、発想を大きく変えました。
顧客数に集中して、売上111.8%を達成
売上ではなく「顧客の数を増やしていくこと」に注力することにしたのです。具体的には、新車販売よりも「メンテナンス」に力を入れるようにしました。新車は数年に一度しか買わない人も、メンテナンスなら定期的に来てくれるからです。
新車を買ってくれた人はもちろんですが、他社で新車を買った人も、エイチ・ドライブでメンテナンスをしてもらえばいい。これなら、新車が売れなくても「顧客」は増えていきます。そこで、すべての施策を「いかに多く新車を売るか」から「いかに顧客を増やすか」にシフトしたのです。
そのために店舗も、「いかに多くの車を陳列するか」でなく、「いかに居心地のよい空間を作るか」にチェンジ。販売店を2カ所に集約するとともに、面積を確保するためにあえて郊外に移転。隣接した土地も取得し、カフェを作って人を呼び込むこともしました。
また、顧客情報を管理し、適切なタイミングでアプローチできるシステムを自社開発するなどして、徹底的に「顧客の数にこだわる」施策を追求したのです。
その結果、エイチ・ドライブの基盤収益経費カバー率(新車の収益を抜いた収益の割合)は、売上のおよそ93%となり、新車が売れようが売れまいが、安定的に売上を上げることができるようになりました。売上のほうも、2022年度と比べて111.8%を実現しています。

