※本稿は、小阪裕司『【新書版】顧客の数だけ、見ればいい うまくいく企業が重視するたった一つの経営指標』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
多くの人を苦しませる「前年比」
「前年比で計画を立てるのはやめてください」
以前、こんなコピーでフェイスブックに自社の広告を出したことがあります。そのころ、私の会社は定期的にフェイスブック広告を出していました。
もちろん、自社の会員募集が目的ではあるのですが、マーケティングや経営について教え、伝えている立場として、世の中では今、どのようなニーズがあるかを把握できる良さもありました。それもあって、方向性の違う複数の広告コピーを作成し、それぞれの効果を測定していました。
たとえばこの時は、
•「お客さんは減るのが当たり前」だと知っていますか?
•お客さんとの繫がりをSNSに特化してはダメ
といったコピーも同時に掲出しました。
その結果はというと、私にとっては意外にも、「前年比で計画を立てるのはやめてください」が反応が高かった。多くの方の心に刺さったのです。その時、つくづく気づかされました。「世の中の多くの人は、これほどまでに前年比という言葉に苦しめられているのか」と。
根拠のない目標設定が失敗を招く
私の知人に、企業の経営企画の仕事をしている人がいます。その会社ではまず、「前年比売上○%」という目標がトップから降ってくるそうです。しかし、それはあくまでバーチャルなものであり、何かの根拠に基づいたものではありません。
ただ、その「前年比アップ」の命令は絶対であり、現場はその数字を達成する計画を組むために四苦八苦するのだそうです。
中小企業の経営者や個人商店などスモールビジネスのオーナーでは、この「経営計画」を立てる役割は、ほとんどの場合、自分です。
そんな中、銀行から「前年比で売上が下がっているので、改善してください」という要求を受けることも多いようです。また、逆に先輩経営者から「企業たるもの、成長し続けるのが使命だ」というありがたいお言葉をいただき、「前年比アップ」のお題目を掲げざるを得ない、ということもあるようです。
つまり、前年比という言葉は、多くの人にとって「目標」というよりは、「足かせ」となってしまっている、ということなのでしょう。そして、そう感じる人が多いからこそ、「前年比で計画を立てるのはやめてください」というコピーが刺さった、ということなのだと思います。
「売上前年比アップを目指して何が悪い」そう考える人も多いと思います。しかし、実際にはこのことに多くの人が疑問を持っている。なぜでしょうか。

