海外で成功したやり方を日本でも取り入れることは、本当に正しい選択なのか。思想家にして武道家の内田樹さんは、日本人には「アメリカ発祥」と聞くと十分な検証もせず取り込む傾向があると指摘する。慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書『武器としての経営思考』(PHP新書)より、2人の対談の一部を紹介する――。
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会社は「お金儲け」だけの場所ではない

【岩尾俊兵(以下、岩尾)】本日は対談の機会をいただき、ありがとうございます。内田先生の著書は学生時代から愛読しており、お目にかかれて光栄です。じつは、先生とも面識のある齋藤幸平さんと交流がありまして、齋藤さんからは「経営学者というだけで内田先生は会ってくれないから、諦めろ」と言われていたのです。資本主義の手先というイメージがあるからでしょうかね(笑)。

【内田樹(以下、内田)】そんなことはないですよ。岩尾先生の著書は、何度も「そうか」と膝を打ちながら拝読しました。「経営とは『ヒトの共同体』であり、その共同体を再構築することが重要だ」というご指摘など、まったく同感です。

【岩尾】そう感じていただけたのは、私が経営学者のなかでも「異端」だからだと思います。組織は、単なる利益追求の道具ではない。人びとが協働する「共同体」として捉えることが必要です。しかし現代の経営学は反対に数字、「カネ」重視の方向性へ進んでいます。いままでにない新しい経営学を打ち立てようと、日々奮闘しているところです。

トップダウン型が日本をダメにする

【内田】岩尾先生の考えに共感するのは、僕自身が岩尾先生と似た問題意識をもっているからでしょうね。最近、ある大学の先生と話していて、日本の衰退は「組織論の構築の誤り」に起因するという点で意見が一致しました。日本の経営者も政治家も多くは「組織マネジメント原理主義」に陥っています。

経営をトップダウン型にすることに優先的にリソースを割き、組織が何を生み出すために創られたのか、いかなる価値を創造するためにあるのかを問う視点が欠如している。典型例が、2024年11月に兵庫県知事選で再選を果たした齋藤元彦もとひこ氏でしょう。

おそらく彼は、「トップの命令がその当否にかかわらず遅滞なく上意下達じょういかたつされるのが組織の理想だ」と考えていたのでしょう。だから、とにかく下僚が決して上司に逆らわないトップダウン組織をつくることを何より優先した。「パワハラ」ではなく「強めの指導」だと彼は本気で思っていたはずです。

パワハラ
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