ハイパースケーラーの財務にも注目
【佐川】加えて、AI投資の全体像を見ていく上では、先ほど触れたハイパースケーラーの財務状況やキャッシュフローにも注目しています。非常に巨大な投資をしていることもあり、一部のハイパースケーラーのキャッシュフローは悪化傾向になっている部分もあります。
キャッシュフローの余力が小さくなっていく中で、社債の発行も非常にハイペースで行っているので、負債も増加しています。こうした中で、投資家もハイパースケーラーの社債に対して、より高い利回りを求めるような状況になってきています。
大きな企業ではありますが、利払い負担の増加や信用状況の変化が起きていないか、ここはしっかり見ていく必要があるかなと思います。
社会はAIをどこまで受け入れるか
――AIには巨大なデータセンターや水資源が必要で、雇用を奪うとの議論もあります。最近はAIの暴走が人類滅亡の引き金になるとの議論や、AIの高度化を背景にしたサイバー攻撃の増加も注目されています。社会がAIをどこまで受け入れるかというリスクを、どのように見ているのでしょうか。
【佐川】おっしゃったように、社会がどれだけAIを受け入れるのかという点は、非常に重要な論点になってきているかなと思います。実際に、アメリカなどではデータセンターの建設に対して、住民運動や訴訟の動きが活発になっています。
安全性への懸念という点では、企業にサイバー攻撃を仕掛けるような動きをするAIが出てくるなど、開発者が意図しない行動をとるAIが出てきてしまっていることも報告されています。
AI企業の側でもいろいろと懸念が高まる中で、開発競争よりも安全対策を重視すべきではないかという声が高まっており、懸念が高まっています。
一方で、アメリカでは安全対策を重視する動きがある中、中国はあまり開発速度を緩めることなく、どんどん新しいモデルを開発し続けています。米中でも足並みがそろっているわけではありません。
こうした動きを踏まえると、AIの安全性やガバナンスへの懸念が一層高まってしまうような事象、インシデントが今後起きてしまうと、例えば政府による規制の強化やモデルの公開制限、データセンターの建設規制などが進み、AI投資に冷水を浴びせるリスクはあるのかなと思います。
そういった意味で、AI投資を見ていく上では、資金調達やインフラ、半導体といった供給面だけではなく、社会がAIをどこまで受け入れるのか、安全性やガバナンスへの信頼性を維持できるのか、そういった観点も非常に重要になっているのかなと思います。
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