AI関連企業の好調は今後も続くのか。丸紅経済研究所主任研究員の佐川未来さんは「AIの導入が利益に結び付いているのは4割という調査がある。AIのコストが増える中で、投資対効果を見極める姿勢が強まるほか、さまざまなリスクが潜んでいる」という――。

※本稿は、ポッドキャストで公開中の「【THE INSIGHT~分析 世界の力学~】#12 売上は急拡大、それでも赤字傾向――『AI投資』の持続性をどう見極める?」の一部を書き起こし、再編集したものです。

佐川 未来(さがわ・みらい)
丸紅経済研究所主任研究員
日系金融機関の調査部を経て2026年から丸紅経済研究所。2021年度から22年度にかけて公益財団法人国際金融情報センター(JCIF)にて東南アジア、中東、アフリカの政治・経済分析を担当。東京大学文学部卒業。

急成長するAIモデル開発企業の稼ぎ方

――2026年は、AI開発企業のxAIを傘下に持つSpaceXの巨額上場もあり、AIモデル開発企業が大きな話題になりました。ただ、一部ではその収益性に疑問符も付いています。そもそもOpenAIやAnthropicといった企業は、どのように稼いでいるのでしょうか。

【佐川】AI開発企業の主な収入源の一つは、個人向けの利用料です。例えば私たちがスマートフォンにアプリを入れて課金するもので、トークン(AIが処理するテキストの単位)の量に応じた従量課金制や、定額の料金制といった形で支払っているケースがあります。

AIアプリのアイコンが並んだスマホ画面
写真=iStock.com/hapabapa
※写真はイメージです

もう一つ大きいのが法人契約です。企業が会社のパソコンなどに導入するのが、かなり大きな収入源になっています。

加えて、MicrosoftやAmazonといったクラウド事業者との提携を通じたモデル提供料(MicrosoftのAzureやAmazonのAWSなど)も収益源となっています。

売上高は増えても赤字傾向の企業が多い

――個人向けの利用料は、ChatGPT Plusなら月額20ドルとイメージしやすいです。各社の売上高は伸びているのでしょうか。また、一般にソフトウェアは一度製品ができれば限界費用が極めて小さく、売るほどもうけが大きくなると言われますが、AIモデル開発は構造が違うのでしょうか。

【佐川】売上高は急拡大しています。従来型のソフトウェア企業の場合、一度プロダクトができてしまえば、利用者が増えても、それによる追加的なコストはそれほど大きくありません。

一方でAIは、利用者が増えるほど、計算資源も同じようにどんどん必要になってくる構造があります。計算資源はAIの開発や運用に必要なもので、例えば半導体やデータセンターなどを指します。AIモデル開発企業は、そうした資源を用意し、その中でモデルを学習させていくコストがかかります。

利用者が使うたびに質問に回答するための「推論」というフェーズにもコストが必要です。利用者が増えるのに合わせて、計算資源も十分に用意しなくてはいけないところがあります。

それ以外にも、AIモデル開発にかかる人材の獲得競争がかなり激しくなっています。高度人材を獲得するには、かなり高いオファーを出さなくてはいけません。こうした人件費も、コスト要因です。

継続的に投資コストがかかってくるという意味で、売上高が増える中でも赤字傾向の企業が多いということが、よく指摘されています。