解法:「場所を移動していきなり作業」
Aさんの仕事速度が上がらない理由は、考える間を省いて脳が予測できないようにしたからです。これはAさんだけの問題ではありません。現代は、誰の脳でも同じことが起こっています。
Aさんには、1つの対策を取ってもらいました。
それは、場所を移動することです。移動した直後に思いついたことを1つだけ完了する。これだけを試してもらいました。
出勤直後、着席直後、部屋を移動した直後、外出から帰社直後。そのタイミングで、頭に浮かんだ作業にいきなり手をつけて完了する。これを実行してもらったところ、Aさんの作業スピードに劇的な変化が起こりました。
「1つ完了すると、やることが浮かんで作業する、という流れができてすぐに作業を終えることができます。わからないことはツールやAIに頼る前に、まず無視して外に出て、戻ったときに思いついたことから作業しているとだんだんわかってくるので、取りかかるまでが速くなります。その後でツールやAIを使うので、その間にまた次の作業のイメージができて進められます」
脳に「考える間」を与えればいい
所を移動することを、認知心理学では「イベント境界」と呼びます(注2)。その間、脳は作業の展開を予測し、どうやればいいかイメージします。
外出先から帰ってきたとき、そのときに考えていた作業から取り組むとスムーズに進むのに、メールチェックから始めると手が止まってしまう、なんて経験は誰しもあるでしょう。これは、移動という「考える間」でできた予測を行動に移すか、省くかの違いです。考える間を省けば、作業は遅くなります。
「考える間」こそが、瞬発力に欠かせない要素だったのです。
(注2)G,A,Radvansky,et al: Event boundaries in memory and cognition. Current opinion in behavioral sciences, Vol 17, 133–140,2017
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