なぜ人口減少が進む時代に、鉄道会社は沿線の街を開発し続けるのか。フリーランスライターの小川裕夫さんは「東急は多摩田園都市の価値を維持するため、高齢化が進む地域で交通の利便性向上などに取り組んでいる。沿線の衰退を防ぐことは、鉄道会社にとって重要な課題だ」という――。
なぜ東急田園都市線に人が集まるのか
東急電鉄の各沿線は東京で人気が高い居住エリアだ。
特に渋谷駅をターミナルに中央林間駅までの約31.5キロメートルを結ぶ田園都市線は全体的に高級住宅街のイメージが強く、圧倒的な人気を誇る。
同線は東京都渋谷区・世田谷区・町田市や神奈川県川崎市・横浜市・大和市を沿線に抱え、その沿線人口は60万人超とも試算されている。1983年に放送されて社会現象を巻き起こした「金曜日の妻たちへ」のモデルになったベッドタウンでもある。
高度経済成長期に計画・造成されたニュータウンの多くは、東京・大阪といった大都市部の地価高騰を背景にしているので、安価な土地に求められ、その立地は当然ながら郊外になった。
鉄道が整備されていても最寄駅から路線バスを乗り継いで10分、バス停を下車してから自宅の玄関まで10分という住戸も珍しくなかった。東急が開発を主導した多摩田園都市も当初は辺鄙な場所だった。
「住民税の源」が「お荷物」に
高齢化の顕著なニュータウンは、高度経済成長期・バブル期までは現役世代が多く、それゆえに自治体にとっては住民税をたくさん納めてくれるありがたい存在でもあった。
そのため、活気が溢れていた時代は公民館・図書館をはじめとした過大とも思える公共施設を整備するなど自治体もニュータウンに手厚かった。
しかし、歳月の経過により住民が高齢化すると、税収よりも福祉にかかる費用が増大し、また若い世帯の流入がないことから街の活性化を阻害する要因にもなっていく。そうした事情から、ニュータウンは不人気となり、以前の輝きを失った。
全国のニュータウンは多少の差異はあるものの、同様の軌跡をたどった。それでも手堅い人気を誇るニュータウンもある。それが多摩田園都市だ。


