今度、人間が受け取る火は何か

その変化を一気に身近なものにしたのが、メタが9月上旬に米国で公開した個人向けAIエージェント「Muse」である。メールの処理、旅行の予約、書類の作成、そして買い物。Museは、大きな目的を計画に分け、進み具合を見守り、必要になれば人間に承認を求める。購入のような重要な操作の前には、利用者の明示的な承認がいる。支払いには、その都度使い捨てのカード番号が発行される仕組みだ。

利用は急速に広がった。米国とカナダに限った集計で、ダウンロード数は公開から12日で280万回に達し、メタの株価も公開後に20%以上上昇した。市場が、Museに人々の日常の新しい入口としての価値を見ていることがわかる。

プロメテウスの火は、人間に「自分の目で見る力」を与えた。いま人間が受け取りつつある火は、その「見る」ことを任せる力である。商売の入口が、人の目から機械の目へと広がり始めている。

ChatGPT、Muse、Grok Botのアプリアイコンが並んだスマホ画面
写真=iStock.com/Kenneth Cheung
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アマゾンはMuseの買い物代行を禁止に

9月20日、アマゾンはMuseによる自社サイトでの買い物を遮断した。Museを通じてアマゾンで買おうとした利用者には、許可されていないAIエージェントによるアクセスは利用規約に反する、という表示が出るようになった。

アマゾンが挙げた理由は3つある。第1に、メタからMuseが自社の店舗に入ることについて了解を求められていないこと。第2に、Museが閲覧するときに、自分がAIであることを名乗らないこと。第3に、Museが顧客の認証情報を保存しているとみられ、プライバシーと安全に懸念があること。同社は、他社のために購入を代行するアプリは、正体を明かして運営し、参加するかどうかを決める事業者の判断を尊重すべきだと述べた。これに対しメタは、認証情報は安全に保管しており、購入のような重要な操作の前には利用者に確認していると反論している。

アマゾンは以前にも、同様の理由でAI企業のパープレキシティを提訴している。その一方で、自社でも買い物を代行する仕組みの開発を進めている。アンディ・ジャシー最高経営責任者は、現在のAIの買い物代行は、価格や情報の正確さの面でまだ力不足だと認めている。