一番時間がかかるのは台所の用
誰でもそうだろうと思うのであるが、私の暮らしの中でも、一番時間がかかるのは、台所の用である。
朝、昼、晩、の3食を自分で支度をし、食べ、茶碗や鍋のあと片付けをすると、1時間から1時間半くらいかかる。
寝るのは夜寝るのと昼寝の時間とを合計して8時間。テレビはおもに夜見る。ちょん髷ものばかりを見る。その他、ほんの少しのものを見る時間を入れると、3時間半くらいは毎日見るかな。
そこで私が机に向かって仕事をしているのは、ほんの3、4時間くらいのもので、あとの時間は、階段を下りて行って、きものの仕事をしている部屋へ行く。そこで、店の者たちとデザインの相談をしたり、雑談をしたりする。
計算してみると、これで24時間が全部つぶれる。いかにも暇そうに見えて、忙しい所以である。
麻雀は日曜日だけ、徹夜はしない
「それではいつ、麻雀をなさるんですか」と問われる。前には、相手をしてくれる人があると、いつでも相手になった。しかし、83歳になったいまは、それでは困る。徹夜は絶対にしない。たとえ相手をしてくれる人があっても、ふだんの日はやらない。
日曜日だけ、それも朝の十時から夜の十時までと言う決まりを、はっきりと守るようになった。齢をとるとは、恐ろしいものである。私は外出はあまりしない。人を訪問したり、パーティヘ出かけたりすることも少なくなった。
では、マンションのこの部屋の外へ出ることはないのか、と言うと、そうではない。
自分の好きなものを買いに出たり、一週間に一ぺんは美容院へ行ったりする。「今日はかぼちゃの好いのが這入りましたよ」とか、「今日は新しい蜆が這入りましたよ」とか、両側の店々の人たちが言ってくれる。
40年近くもこの露地の奥に住んでいるので、私がどんなものが好きか、人々が知っていてくれるからである。


