だからこそ、アンドルーズ空軍基地の駐機場で習を直接出迎えるという歴史上例を見ない対応を取ったのだろう。上空をB1爆撃機が飛行し、会談後には豪華な国賓晩餐会が開かれた。
「権威主義的な指導者から国益への配慮を引き出したいなら、とにかく持ち上げればいいというのがトランプの考え方だ」と、モリスは言う。
一方の習は、あえて分かりやすい反応を示さない。長期的な目標を見据え静かに政敵を排除するその手法は抑制的で一貫しており、予測不能で個人的な関係を重視するトランプ外交とは大きく異なる。
トランプが習を取り込もうとしている今、そうした手法はとりわけ効果的だ。
「トランプが対峙する今の中国は数年前とは違う」と、モリスは言う。「習は中国を外交の新たな中心に位置付けることに成功した。このことは、中国を抱き込みイランなどに合意を迫りたいトランプの計算にも影響するだろう」
習にも訪れる「審判の時」
だが中国にも弱点はあり、それが米政府に好機をもたらすかもしれない。米中関係が専門で、米フーバー研究所の客員研究員を務めるマシュー・ターピンはこう指摘する。
「トランプは習よりも動きが制約されているとの見方には、中国経済への理解が欠けている。政府は経済成長率を4〜5%と発表するが、景気は後退しているとみていい。その主な原因は、コロナ禍で経済的繁栄より安全保障と社会の統制を優先した習の判断だ」
中間選挙でトランプに逆風が吹くとの予想が相次ぐなか、習にも「審判の時は来る」と、ターピンは主張する。
国内問題への取り組みが十分でなければ、2027年秋の第21回中国共産党大会が「信任投票になるかもしれない」と彼は言う。「こうした状況では再選を気にする必要のないトランプが、習の思惑を狂わせる存在になり得る」
とはいえ対中政策を検討する上で、トランプは世界の変化にも目配りする必要がある。かつてトランプは中国への警戒感を世界に広めた。だが世界はいま混乱の最中にあり、安定を求めている。混乱の一因はトランプ自身にある。
「関税、威嚇、侮辱を柱としたショック療法まがいの外交に気まぐれな言動を組み合わせればアメリカの覇権を取り戻せると、トランプは信じているらしい」とNGO国際危機グループ上級顧問のアリ・ワインは指摘する。
「だが相手が一時的に譲歩したところで、アメリカの要求にずっと従うとは限らない」と、ワインは続ける。
「また同盟国やパートナー国がアメリカ以外との連携を強化し、より安定した対中関係を模索すれば、アメリカの影響力はいずれ弱まりかねない。そうしたことを、トランプは想定していない」
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