短時間・単発アルバイトを仲介する「タイミー」を相手に、労働者9人が集団訴訟を起こした。雇用主の都合で一方的にキャンセルされたとして、未払い賃金など計約351万円の支払いを求めている。なぜ雇用主の企業ではなく、仲介役のタイミーを訴えたのか。ジャーナリストの藤田和恵さんが取材した――。
4月21日、タイミーを集団提訴したことを報告する記者会見。原告Aさんは前日どころか、当日にキャンセルされたことがあるといい、「タイミーからの通知に気が付かなければ、そのまま出勤していたかもしれない」と振り返った
ラーメン店から始業48分前のドタキャン
スキマバイトのタイミーを利用する男性Aさん(60代)は、絶対に遅刻はしないと決めている。初めての勤務先の場合は遅くても30分前には最寄り駅に到着。店舗などの場所を確認し、就業時刻まで周辺で時間をつぶすという。
2025年5月、この日は都内の有名ラーメン店で正午から働く予定だった。初めての職場だったので、いったん店の前まで行った後、近くの図書館に入った。そのとき、突然スマホにタイミーアプリから通知が届く。店舗からの依頼でマッチングをキャンセルしたと告げるメッセージだった。時刻は11時12分。業務開始の48分前の“ドタキャン”である。
タイミーから一方的な通知が届くだけ
数年前、母親の介護のために会社を辞めたAさんにとっては、スキマバイトで得る給料が主な収入源。ラーメン店で働けば約3000円が入る見込みだった。「さすがにひどい」と思い、タイミーに抗議したところ、かろうじて総額の6割に相当する金額が振り込まれたという。
Aさんによると、直前キャンセル以外にも、日時や勤務場所を間違えたという企業側のミスによるキャンセルもたびたびあった。多くの場合、タイミーから一方的な通知が届くだけで、賃金は支払われない。Aさんは「ほとんどが泣き寝入り。ラーメン店のときも、自分が何も言わなければ1円も払われなかったと思います」と振り返る。
スキマバイトでは、働き手であるワーカーと企業がスマホのアプリ上でマッチングすれば働くことができる。履歴書も面接も不要、給料も即日払いという手軽さが受け、タイミーをはじめとした各アプリに登録するワーカーは急増している。



