高い評価を受けた直後に6件キャンセル

原告の1人である男性Bさん(40代)は新型コロナウイルスの感染拡大時に勤務先が休業し、収入が減ったことをきっかけに副業としてタイミーを利用するようになった。

これまで、マッチングしていた軽作業の仕事を、英語が話せないという、求人時にはなかった理由を持ち出されて勤務日の前日にキャンセルされたり、勤務後に店舗側から「スキルが高く、マネージャーが感謝していました」と高い評価を受けた直後に、マッチング済みの6件の仕事を一気にキャンセルされたりした。

仕事ぶりに感謝するメッセージ
筆者撮影
企業からの評価などに基づくワーカーランクのうち最高クラスの「MASTER(マスター)」だというBさん。この日も、仕事ぶりに感謝するメッセージが届いた
仕事をキャンセルされたメール
筆者撮影
仕事ぶりが評価され、感謝されたにもかかわらず、その後に決まっていた仕事をキャンセルされた。Bさんは「どうしてキャンセルされたのかわからない」と途方にくれる

店舗側の要求に従って検便検査の結果を提出したにもかかわらず、キャンセルされたこともある。Bさんによると、主な客層が女性や若者のおしゃれな飲食店だったといい「本当は『40代男性』という自分の属性が理由だったのではないか」という疑念が消えない。

いずれも賃金は払われておらず、「1件当たりは数千円ですが、“被害総額”は30万円くらいになります」。

Bさんは「マッチング時に労働契約が成立するなら、キャンセルは解雇と同じではないでしょうか。スキマバイトが広がる前はここまで一方的な解雇はなかったはずです」と言い、スキマバイト独自の仕組みと拡大が多くの賃金未払いを招いたと指摘する。

40代女性「なめられていると感じた」

原告の女性Cさん(40代)も、理不尽なキャンセルはスキマバイトを始める前はなかったという。

主婦であるCさんはもともとアルバイトの経験はあったが、2025年4月からタイミーを利用するようになり、初めて直前キャンセルに遭った。「(労働者が)なめられていると感じました」と憤る。

今回の集団訴訟がそれまでの訴訟と違うのは、企業ではなく、タイミーを相手取っている点だ。原告たちは何を根拠に雇用主である企業ではなく、有料職業紹介事業者という仲介者であるタイミーを訴えたのか。

原告側はタイミーが賃金の即日払いを行っていることに着目。労働基準法は中間搾取などを防ぐため、賃金は雇用主が直接支払うよう定めているが、タイミーは利用規約に「(雇用主の)賃金債務などを併存的に引き受ける」という旨を記載することで、即日払いを可能にしている。法律上は「併存的債務引受」と呼ばれる仕組みだ。

集団訴訟の代理人である牧野裕貴弁護士は「タイミーが雇用主の賃金支払いを保証するという考え方に近い」と解説。この仕組みに従えば、タイミーは未払い賃金についても支払義務を負っており、ワーカーはタイミーに直接請求できるはずだ。併存的債務引受の効力は通常の賃金だけでなく、未払い賃金にも及ぶはずだ、というのが原告側の主張である

代理人を務める牧野裕貴弁護士
撮影=プレジデントオンライン編集部
スキマバイトはこれまでになかった働き方ともいえる。代理人を務める牧野裕貴弁護士は集団訴訟の意義について「スポットワーク市場における労働法の“空白領域”に最初の司法判断を求める試みです」と語る