「6人目のドリフ」とは
入って間もない僕ですら、オチで舞台前面に振り落とされて床に大量にころがったピンポン玉をベニヤ板ではけたり、体操マットをわらったり(どかしたり)、本来は美術さんのやるような仕事も総出でやった。
ドリフが繰り広げる全員集合のギャグには、裏方のADとの「呼吸」で成り立っているものが多い。
たとえば山寺のコントで小坊主の志村が鐘をつこうとすると、なぜか鐘が斜めに逃げて鐘がつけないというギャグがある。なんとかついてやろうとフェイントをかけたりいろんなことをするのだが、鐘のほうはすっかり志村をバカにしているように、絶妙に逃げるのである。
この時の志村さんのリアクションで客席は大ウケだ。この鐘の操作もベテランのADがセットの上で手動でやっている。あまりにも志村さんとの呼吸がぴったりで、新米の僕は感心したものだ。
また、頭上から金タライが落ちてくるオチは「全員集合」の定番だが、これもADがセットの上に潜んで落としている。これを得意とするADがいて、金タライが命中して客が笑えば、まるで自分がウケたように大喜びするのだ。「全員集合」という番組はこういった人々で出来上がっていた。
「全員が、6人目のドリフなんだよね」
高橋Pは、そうよく語っていた。長さんがやりたいと言ったことを全員がよってたかって実現する。自分が何をすれば番組が面白くなるのか、スタッフそれぞれが自分の「全員集合」と思いながら番組に参加していたのだ。
ネタ会議に参加する意外な人物
そういうカルチャーを作ったリーダーの代表格が、先にも紹介したセットデザイナー、マンローさんこと山田満郎だろう。
「全員集合」スタート時から関わる彼は、最初の顔合わせの際に「私は台本はいりません。台本を作る場所にいたい」と言い、毎週木曜日のネタ会議に毎回参加した。
僕もこの業界に入って40年超になるが、セットデザイナーがコントのネタ作りに参加している番組など、他局も含め聞いたことがない。
何度か述べているように、ドリフターズのネタ作りは、あらかじめ作家やディレクターが用意したホンがそのまま採用されることはほとんどない。それらがボツになってからが、ネタ作りの本番なのだ。
長い沈黙のあと、長さんが思いついたアイディアを、デザイナーのマンローさんがその場でスケッチに落とし込む。それでイメージが膨らみ、仕掛けを駆使したギャグが構築されていく。
全員集合の、壮大かつ緻密な計算に基づいた笑いは、こういったプロセスを経てこそ成立した。決まった台本を与えられてセットを考えるのが通常のテレビの作り方なのだが、マンローさんはネタ作りに煮詰まる長さんや演出スタッフとともに、ギャグ作りのプロセスに参加した。
「全員集合」の笑いにセットや小道具は欠かせない。それを作り上げるマンローさんや美術スタッフ達も、まさに6人目のドリフターズだったのだ。
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