自分が怒られた理由を知る
その頃の彼らは、総じて個性豊かで僕からみればおっかない人達だった。のちに親しくなるHさんなどは、丸坊主に長いあごヒゲ、ジーンズになぜかノースリーブの派手なシャツというのが定番。腰にはガチ袋(工具入れ)やナグリ(かなづち)をぶら下げていて、わかりやすく言えば道ですれ違っても絶対にかかわってはいけない人達風なのだ。実は文学少年で涙もろい一面もあったことは後に知る。
大道具さん達は、この番組の一員であることに誇りを持っていた。だからこそ、全力で踊っているのである。
全員集合の大がかりなセットは、TBSデザイン部のマンローさんこと、山田満郎が作りあげてきた。屋台崩しと呼ばれる家全体が倒れる仕掛け、いつ落ちてくるかわからない大きな岩と下に立つ一軒家、家の中の家具やドアなどあらゆるものが歌い出すチキハウスのセット……。山田は1980年に舞台テレビ美術の賞の最高峰「伊藤熹朔賞」を受賞していた。
「全員集合」という国民的番組で、日本一のセットを現場で操作することの誇り。オープニングを一緒に踊ることで、その誇りが情熱へとさらに強化されていったかのようだった。
少しでも面白い放送を出すためになら、俺達はなんでもやる。だからこそ、甘っちょろい僕は怒鳴られたのだ。
全員集合の舞台裏を支えていた人々
「全員集合」という番組は、全スタッフがセクションの壁を越えて、番組を面白くするためであればなんだってやった。
たとえば僕のAD仲間にカズヒロという男がいた。年は同じだがキャリアは僕より2年先輩の彼は、本番になると特攻ズボンを穿き、腰にガチ袋を下げる。全員集合の本番は生放送でやり直しがきかないので総じてみんな気合いが入っているのだが、それにしてもなぜ特攻ズボンなのかと不思議に思っていたら、ある日オンダという一番若いADがそっと教えてくれた。「カズヒロさんは元暴走族なんす」
だから気合いの入り方が少しソッチ系なのねと思いながら、しばらく距離を置くようにしていたのだが、「俊敏」という言葉はこの男のためにあるのではないかというくらい舞台上のカズヒロの動きは抜群で、その後僕のADのお手本、ライバル、そしてよき友となった。
なぜカズヒロが特攻ズボンはともかく腰にガチ袋を下げているのかといえば、ちょっとしたセットの直しのために、大道具さんに頼む時間が惜しいからだ。セットにADが手を入れるなどということは本来許されないことなのだが、「全員集合」ではアリだった。

