「PDCAのDOだけでいい」

取り組みが評価され、恵介さんは日経クロストレンドのマーケター・オブ・ザ・イヤー2023「地方編」大賞を受賞した。授賞式には全国からマーケターが集まり、成功の秘訣を尋ねられた時に「仲良くなることですかね」と答えたという。

「PDCAってありますけど、僕はもうDOだけでいいと思っています。最初から『こうすればうまくいく』なんて正解はありません。だから、まずはやってみようと。幸いにも、それに賛同してくれる社員が多いんですよ。暴走する僕についてきて、支えてくれます」

そう語る恵介さんの話を聞いていた広報の藤田さんは「一緒に働いていてすごく楽しい」と笑顔で言った。

一度だけした「失敗」

恵介さん流のアプローチにより、福田刃物工業は3年間で100回以上メディアに取り上げられている。プレスリリースも打っていないので、広告には一切お金をかけていない。

工場に並ぶ超硬合金の包丁「KISEKI:」
撮影=天白あきえ
工場に並ぶ超硬合金の包丁「KISEKI:」

独自の戦略がことごとく当たっているように見えるが、恵介さんは「一度だけ失敗したことがある」と言う。福田刃物工業で年1、2回行うファンミーティングでは1日で100万円を売り上げるのに、以前に半年間、東京渋谷で展示会を行った時にはまったく売れなかったのだ。

「そうか、人に任せるとこうなるんだなって思いました。だから、常に意識しているのは『自分たちでやろう』です」

マクアケで販売開始してから約4年が経った今も、KISEKI:は9カ月待ちの状態だ。BtoCのヒット商品誕生のおかげで知名度も上がり、中日産業技術賞などを受賞して技術面も高く評価された。

しかし、KISEKI:の売り上げは社内ではまだ8%程度で、依然としてBtoBの比重が高い。今後は、「KISEKI:の比重を上げていきたい」と恵介さんは意気込んでいる。