「本当に奇跡の包丁だね」
2022年2月、KISEKI:の形が出来上がり、モニタリングする時期に入った。福田刃物工業から車で約5分のところにある創作和料理店「葉菜」に、モニターを依頼した。恵介さんが以前からプライベートで通い、料理の腕や人柄に信頼を置いている店だ。
葉菜の料理人、水谷千佳さんは日々の作業で腕の腱鞘炎に悩まされており、毎週注射を打っていたほどだった。それまでもいい包丁を探していたものの、理想のものに出合えていなかった。
モニターをお願いして預けていたのは、感想を書いてもらうためのA4のアンケート用紙一枚。しかし、恵介さんがエンジニア2人と一緒に結果を聞きに行くと、ノートにびっしりと感想が書き込まれていた。ノートを開きながら、水谷さんは言った。
「ずっと自分に合った包丁がなくて、探していて。これはよく切れるし、ものすごく使いやすくて、本当に奇跡の包丁だね」
水谷さんの言葉とノートから興奮が伝わってきた。そして、帰りの車中では、「ものすごいことが起きたぞ」と、3人が高揚感に包まれていた。
一番大事なのは“熱”
恵介さんは、この時のことを振り返る。
「なにかする時に一番大事なのは熱だと思います。モニターの結果を聞きに行くのは別に僕ひとりでもできます。でも、ひとりで行って、あとから『すごいことが起きたぞ』って報告しても、熱が揃わないんですよ。そのあとの影響を考えたら、一緒に高揚感を味わって熱が揃うことは、その人を拘束する時間の何百倍もの効果があるんです」
水谷さんは、KISEKI:を愛用し始めてから注射を打たなくなったそうだ。そして、日本初の超硬合金包丁の名前は「KISEKI:」に決まった。



