原材料の値段が約10倍に急騰

リーマンショック、コロナ禍という危機を乗り越えてきた福田刃物工業だが、今度は「原材料の高騰」という問題が襲った。

中国の輸出規制によって、2025年1月から2026年4月にかけて、超硬合金の原料のひとつであるタングステンの値段が約10倍に急騰したのだ。1年間は、価格を変えずに耐えた。しかし、職人に頼らないKISEKI:は人件費の割合が低く、原材料の値上げは製品の値段に大きく影響する。1本3万4650円から4万9500円に値上げせざるを得なかった。

これにより、国内の売り上げは鈍化すると予想。海外展開に向けて、英語版のブランドサイトの立ち上げなど急ピッチで準備を進めている。

海外展開のひとつとして、インバウンド向けの強化も進めている。KISEKI:ツアーはインバウンド向けも開始し、すでに南米から30人規模の団体が5回訪れた。海外でも「関の刃物」の認知度は高まりつつあり、団体客が呼べるKISEKI:ツアーに地元の観光協会も期待を寄せる。

なお、インバウンドツアーを開始した時も、複数社の新聞で報じられている。

インバウンドツアーの様子
写真提供=福田刃物工業
インバウンドツアーの様子

職人に頼らず機械とエンジニアがつくる刃物

関市には約300社の刃物関連企業があり、「刃物のまち」として全国的にも有名な地域だ。しかし、その実態は、深刻な職人不足という問題を抱えている。

一方、福田刃物工業に職人はいない。機械やエンジニアの力で、新人でも1000本中1000本が同じ品質になる精度を誇っている。関で生まれ育った恵介さんは「機械の力で社会問題を解決したい」と語る。

無気力だった青年は今、「毎日会社に行くのが楽しくてしょうがない」と仕事に邁進している。

「前職でも、今の社員やKISEKI:チームのメンバーもみんないい人たちに恵まれました。仕事が楽しいのは、たぶん周りの仲間のおかげですね」

かつての上司がくれた言葉「どうせやるなら楽しくやったらいいぞ」が、ずっと恵介さんのなかに生き続けているようだ。

パッケージには、幼い頃に遊んだ関の山や川を描いた
撮影=天白あきえ
パッケージには、幼い頃に遊んだ関の山や川を描いた

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