業界の常識から外れた売り方
商品が完成し、いよいよ販売の段階に来た。ここでも「すべて自分たちでやる」道を選ぶ。
「スタートアップが大きな成功を収める確率は極めて低いと言われています。だったら、人任せにせず自分たちでやろうと思いました。僕らは、2年かけて100個以上の超硬合金を無駄にして苦労してきて、絶対に売りたいっていう気持ちは強かったので」
関市の刃物メーカーの8割は商社に卸すことが当たり前という環境のなか、恵介さんは「オンラインのみで販売する」ことを提案した。業界の常識から外れていたため社内から反対の声が上がったが、恵介さんは譲らなかった。
店舗でほかの商品のなかに埋もれてしまうのを避けたかったのと、直接販売することで利益を確保したかったからだ。これまで、BtoB製品で10%以上の利益率を維持してきたからこその選択だった。
PR活動も“昭和”のやり方で
2022年11月からクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で販売開始することに決まる。マクアケは資金集めよりも、まだ世の中にない新商品やサービスを先行販売する場としての特色が強いプラットフォームだ。
企業が新商品を発表する際、プレスリリースや広告を出すのが一般的だろう。しかし、恵介さんはそれらの手法は一切取らなかった。代わりに、「新聞記者に直接アプローチする」という方法を取った。
クラファン開始の半年前、直接販売の経験がなく、PRの方法もわからなかった恵介さんは、新聞社に直接電話をかけた。門前払いされることもあったが、話を聞いてくれた記者のなかには「では一度来てください」と対面の機会をくれる人もいた。直接会いに行って、KISEKI:の素晴らしさについて熱く語ると興味を持ってくれた。
恵介さんは「全部昭和のやり方ですよ」と笑う。この手法が功を奏し、発売3日前に中日新聞や中部経済新聞などで大きく掲載された。
