包丁部門歴代1位に
当日の朝7時。会社にメンバーが集まって見守るなか、恵介さんは販売開始のボタンを押した。すると、わずか1分で何十本もの注文が続々と入ってくる。チームメンバーは、3台並べたパソコンに届く注文を、固唾をのんで見ていた。予想以上の反応に、誰かから「なに、これ」というつぶやきが漏れる。
結果、1日で1200本の注文が入った。その場にいたみんなが、シャンパンファイトのような歓喜に湧いた。
5日目には4000万円を集め、急遽追加した本数も含めて1450本に達したため販売終了。この記録は、マクアケの包丁部門歴代1位を達成し、Makuake Award 2023 GOLD賞を受賞した。
購入者は、現在の購買層と同様の富裕層の主婦もいたが、6割が男性だった。「日本初の超硬合金の包丁」が、新しいもの好きが多いマクアケユーザーに響いたのかもしれない。
3カ月先まで予約が埋まる「KISEKI:ツアー」
恵介さんはクラウドファンディングが終わったあとも「自分たちで売る」ことを考え続けてきた。それは2024年から始めた「KISEKI:ツアー」にも反映される。これは工場見学と包丁の体験がセットになったもので、現在は3カ月先まで予約が埋まる人気ツアーだ。
またしても恵介さんの「昭和的アプローチ」により、ツアー初日は新聞社5紙に加えて、市役所の観光課、商工会議所など約10人が集まった。ツアー定員5人のお客さんより、マスコミ関係者の方が多いという状況だ。
「これもトヨタ方式と同じです。先に『すごいことになってますよ』と見せると、そうなっていくというか、そうせざるを得ない。(自分たちに)プレッシャーがかかりますから」
「なにがなんでも発売日に間に合わせる」トヨタ方式が骨身に沁みている恵介さんは、大風呂敷を広げているように見せて、実は自分自身を追い込んでいるのだ。


