硬すぎて1分間に0.5ミリしか進まない
超硬合金はその硬さゆえに、プレス機でもレーザーでも加工できない。福田刃物工業では、これまでも「ワイヤーカット」を使用していたため、包丁にもこの方法を採用した。ワイヤーカットとは、超硬合金の板を水の中に入れ、0.25ミリの超極細のワイヤーに電流を流して、熱で溶かしながら切断するという方法だ。1分間にわずか0.5ミリしか進まないという遅さで、形を切り出すのに約10時間かかる。
形が切り出せたら、次は「刃付け」だ。これも超硬合金が硬すぎるため、ダイヤモンドを取り付けた特殊な研磨機を開発した。約30分かけて両面を研いでいく。
最初から最後まで自分たちでつくる
さらに、包丁の柄の部分の木工加工も自分たちの手で行う。福田刃物工業は金属加工が専門なので、木を扱うのは初めてのことだった。
最初は柄の部分だけ外注することも考えた。しかし、あとで改良したいと思った時、外に頼むと融通がきかないリスクも考え、自分たちで行うことにした。初挑戦の素材で、難しくはなかったのだろうか。
「実を言うと3日でできました。僕らはもともと図面を書いて、その通りに機械を動かすということには慣れていたんですよ。当社は、設計やそれを実行するオペレーター、それぞれの能力が高いなと改めて思いましたね」
刃物の業界では、切断、熱処理、刃付けなどは分業制が一般的だ。しかし、福田刃物工業は受注生産を長年続けてきたため、「最初から最後までつくるのは当たり前」のことだった。これまでに培ったノウハウをすべて詰め込んだのがKISEKI:なのかもしれない。
この「すべて自分たちでやる」という姿勢は、のちに販売にも反映されることになる。




