何かをやろうと思って忘れてしまう「ど忘れ」が起こるのはなぜか。脳研究者の澤田誠さんは「記憶のインデックスとしての役割を持つ海馬の機能が落ちると、知っているはずの情報がうまく再活性化できず、『ド忘れ』の状態が起こりやすくなってしまう」という――。
※本稿は、澤田誠『科学的根拠で証明する上手な脳の使い方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
日常的に起こる「ど忘れ」の根本原因
リビングにいてふと思い立って寝室に来たのに、何しに来たのかわからなくなってしまった。仕方がないのでリビングに戻ってソファに座った途端、スマホの充電器を取りに行ったんだったと気がついた――。
よくある「ど忘れ」という現象ですね。ど忘れは、いったん覚えたことを思い出すのが困難な状態を指します。
似たような現象に「物忘れ」という現象がありますが、「物忘れ」はある事柄を覚えようとしても覚えられない状態で、「記憶障害」と呼ばれます。一方、「ど忘れ」は覚えている事を思い出せない状態で、専門的には「想起障害」と呼ばれます。
取りに来たものを忘れる程度のことならいいのですが、重要な場面で言葉が出てこないとなれば、悲惨なことになってしまいます。
なぜこのような事態に陥ってしまうのでしょうか。
本記事では、「アウトプット」をテーマに、いくつかの脳の特性を見ていきたいと思います。
まずは日常的に起こる「ど忘れ」の話から始めましょう。
さて、「ど忘れ」が起こってしまう原因には、脳の機能の1つである「周辺抑制」が関係しています。
この機能は、例えるなら小学校の朝礼のようなものです。
朝礼が始まる前は、子どもたちが勝手に走り回ったり、大きな声で喋ったりしています。
非常にカオスな状態で、これでは校長先生の話は聞こえません。
そこに怖い体育の先生が「整列して静かにしなさい!」と一喝します。すると、子どもたちはちゃんと並んで、喋らなくなります。
すると、校長先生の話が聞こえて朝礼が成立するというわけです。
脳の中でもこれと同じようなことが起きています。

