報道陣をも虜にした大谷翔平の神コメント
会見やインタビューでは、必ずしも答えやすい質問ばかりではありません。時には、厳しい言葉や、反応に困る話題を向けられることもあります。
こうした場面で、その人の器がはっきり表れます。感情的に反論するのか、言葉を濁してかわすのか、それとも場の空気を前向きに変えるのか。受け止め方ひとつで、聞き手の印象は大きく変わります。
この点で、トップアスリートのメディア対応力、受け答えには大いに学ぶべきものがあります。
その代表格が、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手です。
2025年10月、ブルージェイズとのワールドシリーズで敵地トロントに乗り込んだ際、スタジアムでは観客から「We don’t need you.(お前なんて必要ない)」というチャント(スポーツの試合で観客が発するかけ声や応援歌)が起こりました。
大谷選手の獲得に名乗りを上げながら、最終局面でドジャースに敗れた恨みも込めた、手厳しい歓迎ですね。
後日、この出来事について感想を求められた大谷選手は、相手を批判することも、不快感を示すこともありませんでした。
「家庭では、トロントで言われたようなチャントを言われないようにしたいなと思っています」
こう語り、笑いを誘ったのです。
敵地の挑発というネガティブな話題を、ユーモアを交えた「家庭の話」へと転換する。その場の空気は一気に和らぎ、報道陣の間にも笑いが広がりました。
否定せず、怒らず、場を明るくする方向に変えてしまう。ここに大谷選手の見事な「ポジティブ変換力」があります。
「りくりゅう」木原選手の秀逸な返答
もうひとつ、参考になるのが、フィギュアスケートの「りくりゅう」こと三浦璃来&木原龍一ペアの木原選手です。
2026年2月、東京都内の日本記者クラブで行われた会見では、ミラノ・コルティナ五輪で金メダルを獲得した、りくりゅうペアに多くの関心が集まりました。
五輪のショートプログラムでは、りくりゅうペアにとって痛恨のミスとなるリフトの場面がありました。その場面について、後日記者から「オリンピックには魔物がいると感じたか。もし魔物がいるとすればひと言お願いします」と、なんとも答えにくい質問が飛びました。
しかし、木原選手はこれに対し、慌てる様子もなく冷静に振り返ります。
「魔物を感じたというより、オリンピックという舞台で自分たちが少し動きすぎていた」「普段より動きが速いタイミングになり、そこからリフトの軌道と回転のスピードがずれてしまった」と、技術的な理由をわかりやすく説明したのです。
さらに、こう続けました。
「魔物の正体は、調子がよすぎたことだったのかもしれません。魔物に声をかけるなら『今じゃなくていいでしょ』ですね」
そういって苦笑し、会場の笑いを誘いました。
答えにくい場面を、悔しさや言い訳に終始するのではなく、冷静な説明とユーモアで和らげる。その姿勢は、聞く側すべてに温かい印象を残しました。

