おかげで、会社の仕事の効率も上がったという。いくら副業とはいえ、自社のノウハウを使って起業した事業が赤字では顧客に対して説得力を持たない。
「まず収益を上げることを目標に据え、きちんと納税はしています。意図的に赤字を出して給与所得と相殺し、節税する意図は最初からありませんでした。確定申告をすることで税のしくみがわかったことはよかったですね」と竹内氏。軌道に乗ってくると、会社員としての収入のほかに、もう一つの収入源でリスク分散しようと考えるようになったという。
「商売を楽しむ余裕も出てきました。お金を使って趣味を楽しむよりも、趣味でお金を儲けるほうがいいでしょ」
立ち上げ当初は月商10万円程度。商品が増えるにつれて売り上げも増え、最盛期には2000万円に達した。現在の規模にまで減少したのは、近々、別の事業を立ち上げるためにネットショップ事業を縮小しているからだと竹内氏は語る。
結局、サラリーマン法人化を阻む一番の理由は社員の「解雇不安」だろう。特に雇用情勢が悪化している今は、リストラの準備と受け取られがちなのだ。中小企業の経営者に社員のサラリーマン法人化をすすめている高橋氏も、そこがネックになっていることを認めている。
「社員の不安を解消するために、20年、30年の長期にわたる業務委託契約を結べばいいのです。会社都合で契約を解消するときは退職金の代わりに違約金を支払う。社員のほうも短期間で辞めるときはペナルティを受けるという方式です」
確かに社員の不安は解消されるだろうが、今度は会社に縛られるという不満が生じるかもしれない。