【選択その2】サラリーマン法人化
節税を考えるのなら副業として事業を行うよりも、いわゆる「サラリーマン法人」をつくって、勤務先から今やっている仕事を業務委託してもらうほうが合理的であると高橋氏は考えている。
普通のサラリーマンは会社に雇用されて、労働を提供して賃金を得る。それに対して、サラリーマン法人とは、自分で事業会社をつくり、勤務先と業務委託契約を結んで業務を遂行することで業務委託費を受け取る。給料と同額の委託費をもらい、経費を積み上げるなどして法人を赤字にすれば、税金が減り、手取りが大幅に増えるというしくみだ。会社側にとっても、負担していた健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険費と退職掛け金分等も本人負担となるので、コスト削減となり、理論上は一石二鳥といえる。
外資系金融機関に勤務している女性、Aさん(35歳)は、2年ほど前にサラリーマン法人を立ち上げて、会社の仕事を請け負うことにした。
Aさんが社長となったサラリーマン法人では、社長の給料を低めに設定し、夫を社員として雇って給料を支払うことにした。さらに自宅を事務所に、自家用車を社用車に、海外旅行を海外研修や出張扱いとすることで経費を膨らませて会社としての利益を圧縮、法人所得を赤字にした。結果、収入は変わらないのに実質手取りは年間で約230万円も増え、会社員時代の住民税と所得税を合わせた額以上の節税となった(図(3)参照)。
しかし、デメリットもあったという。
「外資系といっても、上司がサラリーマン法人化の意味をよく理解しておらず、正社員には頼めないような雑務を押しつけるようになり、それは不愉快でしたね」
加えて、今のような不況下では、実力がない人はすぐに契約を打ち切られるだろうというのがAさんの実感である。
「一番よかった点は、自分で確定申告するようになって、税金のしくみが理解できるようになったこと。会社に頼らず、今後、自立してやっていく基礎ができたと思う。サラリーマン時代はあまり意識しなかった、お上の税金の無駄遣いなんかにも今は腹が立ちますね」
Aさんの場合、サラリーマンとはいえ、正社員にも雇用の保障がない外資系勤務。共稼ぎの夫も高所得で子供はおらず、Aさんに何かあっても生活には困らない。少々特別な例であるといえるだろう。