クマとの相撲、決め手は喉輪攻め

子グマと遊び、相撲を取ったりする中で、徐々に扱い方が分かってくる。クマを制するには「なんといっても喉輪攻め」だとデボは言う。

首を押さえてしまえば、息も苦しいし噛みつくこともできない。そこで威力を発揮するのが、アイヌが山を歩くときに必ず持っていたという、先端が二股に枝分かれした木の杖だ。

「クワ」と呼んでいた杖を刺股のように使って、クマの喉元をグッと押す。この攻撃はかなり有効で、それだけでクマはひるむ。それでも前に出てこようとするときには、クワを傾けてクマの力を左右にいなす。

ヒグマでも2歳くらいまでであれば、杖だけでひっくり返すことも可能だそうだ。もう1つの弱点は鼻先だ。クワの先端を鋭く尖らせておき、遊びの度が過ぎてくると、クマの鼻をチョンと叩く。思い切り刺す必要はない。軽くつつくくらいでもクマはすぐに逃げ出す。

山歩きに使う「クワ」でクマの動きも制御する
山歩きに使う「クワ」でクマの動きも制御する[撮影=山田貞司 出所=『羆追人たち』(山と溪谷社)]

クマの攻撃といえば、牙で噛むことと爪で引っ掻くことだ。子グマといえども、軽く見てかかると大変なことになる。噛まれないようにするためには、クマに人間を噛んではならないと教え込まなくてはならない。

例えばクマが指先を噛んできた瞬間、普通の人なら本能的に手を引いてしまう。しかしそこで逆に、喉の奥に手を突っ込む。するとクマは苦しくてむせかえる。これを数回繰り返せば、人間を噛むことはなくなる。まだ顎の力が弱い子どものうちに、しっかりと仕込んでおくのだ。

ヒグマに襲われたときの知恵

引っ掻かれないための対策は難しい。クマが繰り出すパンチはネコのように素早く、到底かわせるものではない。それを避けるには、間合いを詰めてクマに抱きつくしかない。

父親や周りの大人からも、山でヒグマに襲われたときの対処法を教えられていた。まずは前足ではたかれる前に、身を屈めて懐に入り込む。次にクマの口に片方の手を突っ込んで噛まれないようにする。そして反対側の手に握った刃物でクマの腹を刺しまくる。

片手は食いちぎられても仕方がないと割り切り、刺し違える覚悟で臨む以外に生き残る術はないという。実際そのようにして、片腕を失いながら生き延びた猟師もいたそうだ。