先生に、信じてもらえない…
「そしたらボーンってゲンコツ食らってな。『コラ、ウソつくんだったら、もっとマシなウソつけ』って先生に怒られたのさ。やー、ホントの話なんだけどな。ま、信じてもらえんかったのも仕方ないって今となっては思うけど。悔しかったなあ」
後で聞けば、そのおじさんはツキノワグマを連れて飲み歩いては、しょっちゅう忘れて帰ってしまうことで有名だったという。それでも大ごとにはならず、笑い話で済んでいた。当時は、いろいろな意味でおおらかな時代だった。
こんな話もある。ある日、近くでヒグマを飼っていたお兄さんのところに行ってみたら、ヒグマがいない。「どうしたのさ?」と聞くと、「山行って散歩させてたら木に登っちまってな。降りてこないのよ。だからもう待ちきれんで、俺1人で帰ってきたわ。どうせそのうち、腹空かして戻ってくっぺ」とのことだった。
クマは木を登るのは得意だが、降りるのが下手だ。てっぺんまで行って降りられなくなると、そこで体が固まってしまい、不安になって鳴き出す。飼い主としては、助けたい気持ちはあるものの、そんな高いところには登れないし、そこからクマを降ろすことなどもってのほかだ。
下から見守るしかないが、ずっとそこにいると、クマは甘えて鳴き続けるだけになってしまう。飼い主がいなくなると、クマはいよいよ観念して、なんとか自力で降りてくるという。案の定そのときも、しばらくするとヒグマがお兄さんの家に走って帰ってきたそうだ。
クマのお尻を撫でて…
デボが中学生のとき、父親がまた新しいツキノワグマを買ってきた。家に来たときには生後3カ月ほどで、今回はデボが世話をすることになった。
最初のころは毎日2回、ミルクをあげる。クマの乳は人間よりも濃いので、人間用の粉ミルクを通常の倍の濃度でぬるま湯に溶かす。湯加減が大切で、熱いと飲まないし、冷たいと喜ばない。
フンの世話も大変だった。子グマは便意を催すと檻の中をウロウロしだすので、それと分かる。しかし自分だけでは排泄ができず、肛門を刺激してあげる必要がある。
油をつけた指先や、布などでお尻を撫でてあげるが、どうしても汚物が手についてしまうのが、子ども心に嫌でたまらなかった。外で飼っていたので、土の上で排便させ、それをスコップですくって捨てていた。

