インドを「お金の対象」として見てはダメ

社食、レトルトカレーと、社内外での評価を高めたベジタリアン食は、さらなる躍進を遂げ、2026年にJALの機内食として採用された。

JALとの出会いは、スズキと鳥善など地元企業を中心とした事務局が開催していた「インドはままつフェスティバル」でのことだ。時はさかのぼって、すでに社食でベジタリアン食の提供を始めていた2024年。スズキの石井副社長から鳥善の伊達さんに「浜松でインドのイベントをやろう」という誘いがあった。

「インドの経済成長に注目が集まっていますが、石井副社長はインドを“お金の対象”として見ていてはダメだと言います。インド人はそういうのをよく見ていると。そうではなく、我々がインドのためになにができるかが大事です、とおっしゃっていました」(伊達さん)

遠く離れた日本に来て、働いてくれるインド人のためになにができるか。それは、食事の面だけに限らない。家族が来たときには教育環境や医療の整備も必要になる。石井副社長には「まち全体でやらなければいけない」という思いがあった。その文脈のなかで出されたのが「文化的な取り組み」というアイデア、つまり浜松でのイベントだった。

2024年9月、スズキや鳥善の社員などの有志で実行委員会を組み、「インドはままつフェスティバル」を開催。インド料理の出店やステージでのダンスパフォーマンス、インドのお祈り行事などが行われ、浜松に住むインド人だけではなく、東京などの遠方からも訪れる人たちで賑わった。

多くのインド人が集まった「インドはままつフェスティバル」
写真提供=鳥善
多くのインド人が集まった「インドはままつフェスティバル」

JAL機内食に届いていたクレーム

そして翌25年、2回目のインドはままつフェスティバルにJALインド支店が出店をしており、支店長の竹井亮人さんが鳥善のカレーを口にした。「日本にこんなにおいしいベジタリアン料理があったのかと、びっくりしていました」と伊達さんは振り返る。

というのも、JAL側もこれまでにインド便の機内食に課題を抱えていた。機内で「ビーフ・オア・チキン?」というフレーズを聞いたことがあるだろう。どちらも肉が入っている。JALでは、ベジタリアン食は「特別食」として事前予約した人に提供するスタイルで対応していた。

しかし、インド行きの便は半数以上がインド人で、ベジタリアンも多い。特別食は名前と座席をひとつずつ確認してから提供するため、通常ミールよりも時間と手間がかかっていた。

そこで、「ビーフとチキン」ではなく、「日本食とベジタリアン食」に変更したものの、味への不満が多く、まだまだ乗客の満足は得られていない状況が続いていた。クレームも発生しており、インド便の業務負荷は極めて高い状態であり、労務上の課題になっていた。

JALとしてはずっと改善したいと思っていたものの、ベジタリアン食に対応してくれる業者が見つからずにいた。しかし、ついにイベントで鳥善のカレーに出会い、伊達さんに機内食の依頼をしてきたのだ。