インド人社員の反応は…

開発を始めてから約4カ月。2024年1月から社食での提供がスタートした。

「インド人の方からは、改善してくれてありがとう、とすごく喜ばれました。『母の味みたいだ』と言ってくれる人もいたんですよ。社食はレストランと違って、働く人や生活を支えるための食事です。家族と離れて暮らし、一生懸命がんばっている人たちが私たちのベジタリアン食を食べて、ふるさとの味だって言ってくれるのが最高にうれしかったです」(伊達さん)

ランチタイムにスズキ本社の食堂を訪ねると、多くの従業員でごった返していた。広報担当者から紹介されたのは、北インドにあるマルチ・スズキ・インディア社から出向してきたふたり。当日のメニュー、インゲン豆の料理「ラージマ・マサラ」を食べながら、来日してから約1年というふたりに、感想を聞いた。

取材日に提供された「ラージマ・マサラ」
撮影=中谷秋絵
取材日に提供された「ラージマ・マサラ」。ベジなのに、こってり濃厚な味わい
来日して約1年のふたり
撮影=中谷秋絵
来日して約1年のふたり。日本語でインタビューに答えてくれた

「95%インドと同じ味」「特にこのキャベツの炒め物は本当においしい」と楽しそうに語る。彼らにとって、辛さはやや足りないようだったが、「他の店で食べるより食堂のほうがおいしい」と太鼓判を押した。

「レストランを経営してきて、『ごちそうさま』と言ってもらえることはありますが、『本当にありがとう』とまではなかなか言われません。インドの方々が本当に困っていたんだなということが伝わってきて、やってよかったと思いました」(伊達さん)

スズキファンとインドファン両方を取り込んだ

社食が好評を得て、本社の隣にあるスズキ歴史館のグッズコーナーで、おいしくできたカレーをレトルト化してお土産として買ってもらいたいという声がスズキから上がった。

鳥善にとっては、食品のレトルト化もこれまでに経験のない領域だ。まずは、レトルト食品を製造してくれる会社探しから始まった。今までのつながりはゼロ。そのため、十数社をリストアップしてサンプルを作成してもらい、味の再現度が高いところに絞り込む。

会社が決まると、次は商品づくりだ。レトルト商品をつくるためには、殺菌のために120度で4分以上加熱するという食品衛生法の基準がある。しかし、高温で熱を加えることで具材は崩れ、香りも飛んでしまう。崩れにくい具材選びや大きくカットすること、具材やスパイスを入れるタイミングなどを細かく調整していった。

ひとつの商品ごとに4~5回の試作とフィードバックを重ね、約9カ月かけて完成。2025年6月から販売を開始した。

当初は大根サンバル、トマトレンズダール、茶ひよこ豆マサラ、青菜ムングダールの4種類。現在は南瓜サンバルも加わり、全5種類のラインナップだ。

レトルト商品
写真提供=スズキ
ひとつ918円(税込)と、レトルト商品のなかでは高価格帯だ