「正社員にする」話を反古にされた
ところが、またまた試練が待ち受けていた。試用期間後の正社員(本採用)が反古にされたのである。
「LED機器の設計・製造の会社でイチから教えてもらい、ある程度機械なども使えるようになったのですが、大阪にある本社から採用できないと言ってきたのです。それでは約束が違いますし、ショックでした。正社員にしてもらえないなら仕事を続けるわけにはいかないので、お断りしました」
試用期間であっても正当な理由がなければ不当解雇に相当する事案であるが、小林さんに会社と争っている時間的余裕はなかった。
突然の失業状態に陥り、再び就職先探し。地元のハローワークに通い、何件も紹介を受けたが、結局決まるには至らず、長崎に来てから3カ月が経過していた。
「仕事が見つからないことに妻も心配していたようですが、大丈夫だからと言い続けました。退職金もありましたし、悩んでいてもしょうがない、とにかく前に進むしかない、なんとかなると自分に言い聞かせていました」
まさか50歳を超えて、こんな目に遭うとは……。「前へ」と自分を自分で励まし続けていたが、そんな後悔はあったに違いない。
偶然出会った派遣エンジニアの仕事
ハローワークが使えないならWebだと、必死に情報収集。そして、ようやく出会ったのがSSEの派遣エンジニアの仕事だった。
佐世保市や近隣での仕事も紹介されるなど自力で仕事を見つけるよりも安心だと感じた。当初は鹿児島県や広島県の工場に約3カ月間派遣され、その後、SSEの常用型派遣(無期雇用派遣)社員として、自宅から車で50分の距離にある半導体用シリコンウエハーのメーカーで働いている。
半導体基板の母体となるウエハーの試作と作られた結晶の出荷などの管理の仕事をしている。前職の情報機器の品質管理とは違い、機器の材料となる基盤の仕事であるが、小林さんは満足している。
「前職の仕事の内容と遠くはないですが、近くもない感じです。業務はイチから覚えることになりますが、前職でも工場勤めを20年以上やってきたので、工場のどの部門に話をつければうまくいくのかという交渉や連絡などのハンドリングは経験が生きて、1~2カ月でおおよそのことはできるようになりました」
職種は異なるが、工場で経験した折衝やコミュニケーションなどのポータブルスキルは今も活きていると実感し、やりがいも感じている。
「前職のパソコン機器も毎年のように更新され、そのたびに新しい知識を吸収するのが仕事でしたし、新しいことを学ぶことは苦ではありません。今の仕事もすごくおもしろいし、やりがいもあります。できれば65歳以降も働き続けたいし、70歳を超えても働けるうちは働きたい」
そう意欲を露わにする。

