ロシアとカザフスタンの強い経済関係
ロシア政府はトカエフの提案を受け入れなかった。ロシア国営『タス通信』などによると、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、戦争を凍結することは不可能だと述べた。
「トカエフ大統領はウクライナ問題について繰り返し発言しており、一貫した立場をとっている。これはロシアが同意することを意味するものではない。しかし、カザフスタンは我々の最も緊密なパートナーであり、最も緊密な同盟国だ」とカザフスタンとの関係性をアピールしたうえで、「根本原因の説明が十分ではなかったのだろう。今後は、これまで以上に力を注いで説明を続けていく。パートナーの皆様には、私たちの立場を理解していただきたい」と釈明した。
ロイターなどによると、ロシアは和平の条件として、ロシアが領土だと主張するドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州全域からウクライナ軍が撤退することや、ウクライナが北大西洋条約機構への加盟方針を放棄することを求めている。ウクライナはこれらの条件を拒否しており、ロシアが占領した地域に対する主権も認めていない。
今回の発言が注目された理由には、ロシアとカザフスタンの強い経済関係がある。
『カズインフォルム』によると、カザフスタンではロシア資本が参加する企業が2万社以上活動している。過去20年間のロシアからの投資額は300億ドルを超え、カザフスタンからロシアへの投資額も90億ドルを上回る。両国は産業、運輸、原子力、宇宙などで協力している。トカエフは今回のフォーラムで、両国が177件、総額520億ドル超の投資プロジェクトを形成し、このうち122件が実施済みだと説明。「今日の厳しい地政学的状況を考慮すると、非常に重要な規模だ」と評価した。
ロシアの「同盟国」でもロシアの立場に盲従しているわけではない
一方、カザフスタンはウクライナ問題でロシアの立場を全面的に支持しているわけではない。
カザフスタンは、国家の領土保全や国連憲章の原則を外交上の基本方針としている。ロイターなどによると、2022年、カザフスタン外務省は、ロシアが占領したウクライナ東部などで実施した併合のための「住民投票」を認めないと表明した。トカエフも同年、ロシアが独立を承認したドネツクとルハンスクについて、カザフスタンは国家として承認しないとの立場を示していた。
戦争はカザフスタン経済にも直接影響している。カザフスタン産原油の主要な輸出経路であるカスピ海パイプライン(CPC)は、カザフスタン西部からロシア領内を通り、黒海沿岸のノボロシースク港に到達する。
ロイターなどによると、7月には、ノボロシースク近郊のCPCターミナルで積み込みを予定していたタンカーが無人機攻撃を受け、安全上の理由から原油の受け入れと積み出しが停止された。ロシアはウクライナによる攻撃だと主張したが、ウクライナ側はコメントしていない。
輸出制約を受け、カザフスタンの石油会社は貯蔵設備が満杯になるのを防ぐため生産を一時的に削減した。原油・ガスコンデンセートの生産量は、7月平均の日量約207万バレルから、22日には約163万バレルへ低下したと報じられている。
ウクライナのアンドリー・シビハ外相は、トカエフの発言を「現実的で、時宜にかなった、賢明なメッセージ」と評価。「ウクライナは、前線での戦闘を止め、外交に転じることを提案しましたが、クレムリンはこの平和への明確な道筋を拒否し続けている。プーチンの報道官も、カザフ大統領の提案をすでに却下している」としたうえで、「ロシアが現実的な和平提案を受け入れる前に、さらなる圧力を加える必要がある」と結論付けた。
ウクライナ戦争勃発以降、「同盟国」による「ロシア離れ」が加速している。例えば、長くロシアと友好関係を結んでいたアルメニアも、隣国アゼルバイジャンとの紛争でロシア主導の軍事同盟(CSTO)が十分な支援や機能を発揮しなかったことを指摘。2024年に関与凍結を表明したのち、CSTOからの脱退を明言している。


