中国人と間違われ、焼酎瓶で殴られた台湾人男性

台湾の観光客がバッジを着用するのは、すでに複数の暴行事件が起きているのを踏まえてのことだ。

韓国語と英語で「台湾出身です(I'm from Taiwan)」と書かれたバッジ(写真=Instagramのスクリーンショットより)
韓国語と英語で「台湾出身です(I'm from Taiwan)」と書かれたバッジ(写真=Instagram投稿スクリーンショットより)

昨年4月、韓国のバスの車内でのことだった。中国語で会話していた20代の中国人女性旅行者2人に、30代の男が突然蹴りかかった。男は停留所で降りた2人を追いかけ、さらに暴行を加えたと、韓国経済紙のアジア・ビジネス・デイリーは伝えている。

わずか5日後、同じ男がまた事件を起こした。今度は30代の台湾人男性を中国人と勘違いし、焼酎の瓶で頭を殴りつけた。この2度目の犯行で、男はようやく逮捕された。

昨年8月、ソウル西部地方裁判所は懲役10カ月の実刑を言い渡した。裁判所は、「被告は中国国民に対する敵意を抱き、夜間に意図的に中国人を標的にした。ヘイトクライム(人種や国籍への憎悪に基づく犯罪)に該当し、厳罰に値する」と述べた。だが、判決が出ても暴力事件は止まらなかった。

昨年9月、ソウルの繁華街・弘大(ホンデ)エリア。韓国英字日刊紙のコリア・タイムズによると、台湾人YouTuberの女性が友人と歩いていたところ、韓国人男性2人に、「一晩一緒に過ごさないか」と声をかけられた。男らは友人の肩や髪に勝手に触りはじめ、女性が拒むと殴りかかった。顔や手足にあざが残り、親指は骨折。「断っただけで殴られるなんて、思いもしなかった」と女性は語っている。ただし警察は最終的に、事件は「台湾人女性と韓国人男性の相互暴行」であったと認定している。

中国語で電話中、地下鉄で突き飛ばされた人も

敵意は旅行者に限らず、韓国で暮らす人々の日常にも及んでいる。

香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストによれば、ソウル在住の台湾人駐在員ジョセフ・チュンは、地下鉄で母親と中国語で電話していたとき、見知らぬ人に突き飛ばされたという。「相手は何も言わなかった。でも、敵意は確かに伝わってきた」と彼は恐怖の瞬間を振り返る。

中国大使館がある明洞では、3カ月以上にわたって反中デモが繰り返されてきた。数百人規模のデモ隊が押し寄せ、地元の人々の暮らしを脅かしている。

サウスチャイナ・モーニングポストによると、デモ隊は「China out(中国は出ていけ)」と声を張り上げ、差別的な歌を歌いながら通りを練り歩く。

怯えた中国人観光客たちは、その場から逃げ出していく。地元の商店街の店主たちは、客を失いながらもなすすべがない。店舗オーナーのパク・ジョンス氏はMBCテレビで、「中国人を標的にしたプラカードを、目の前に突きつけてくるんです。デモ隊が来る日は、商売がほとんどできません」と嘆いた。商店主がヘイトスピーチをやめるよう頼むと、逆にデモ隊から脅されることもあったという。

警察も動いた。習近平国家主席などの写真が入った横断幕を撤去し、参加者から事情を聴いた。最終的にはデモ隊が明洞に入ること自体を禁止した。