「正当な商行為」ならスパイ防止法でも取り締まれない
ここに、今の日本の大きな弱点があります。本来であれば、国外流出から守るべき技術を持った企業が、後継者不足や経営不安をきっかけにM&Aに応じ、その結果、技術ごと実質的に海外に移っていく。
これは合法的な商取引の形を取る分、むしろ止めにくいのです。
スパイ防止法ができたとしても、それはスパイ行為を取り締まる法律です。一方、会社を売る、M&Aをするという行為そのものは、基本的には正当な商行為です。だから、警察だけでは守れません。
守るべき技術は何か。その技術を持つ会社が売られそうになったとき、日本としてどう支えるのか。外国資本に渡す前に、国内で守る仕組みをつくれるのか。そこまで考えなければ、本当に重要な技術は守れません。
中小企業や地方企業が踏み台にされれば、その先にある大企業や官庁にまで影響が及ぶことは十分に考えられます。
スパイや外国勢力は、一番入りやすいところ、一番守りが薄いところから入ってきます。だからこそ、「うちは関係ない」という発想だけは捨てなければいけない。
中小企業も地方の企業も、今や日本のスパイ活動の最前線として狙われています。ひそかに入り込まれ、気づいたときには決定権ごと握られているかもしれない――それが日本で起きている経済安全保障上の脅威なのです。
「寺」「神社」が狙われている
もう1つ、今、狙われている領域があります。それが宗教法人です。
近年、後継者不足や経営難を背景に、宗教法人が実質的に売却されるケースが増えています。
地方の寺院や神社では、跡を継ぐ人がいないという状況が珍しくなくなりました。その結果、法人そのものを維持できず、外部の人間が「継承する」という形で運営に入る。これは一部の特殊な話ではなく、すでに起きている現実です。そして、その流れの中で、外部資本が入り込む余地が生まれているのです。
宗教法人が注目される理由はいくつかありますが、まず大きいのは「税制上の優遇」です。
宗教活動に関する収益は、原則として課税されません。本来は信教の自由を守るための制度ですが、見方を変えれば、無税で運用できる領域が存在するということになります。
さらに宗教法人は、資金の流れが外から見えにくいという特徴があります。宗教活動という名目さえ立てば、お金が入ってきても、その後どこへ流れていったのかが細かく問われにくい。一般の会社のように税務当局が厳しく入っていく世界ではないので、マネーロンダリングの隠蓑として利用されやすい環境があるのです。

