「人そのもの」「人脈」が狙われる

つけ加えると、スパイがほしいのは、その会社の技術そのものだけとは限りません。スパイはその人が持っている情報や人脈をほしがることがあります。

・その人のパソコンの中にある連絡先
・携帯電話の中のリスト
・取引先や共同研究先、グループ企業とのつながり

そうしたものを踏み台にして、さらに先へ入っていこうとする。これは企業でも同じです。

握手をするビジネスマン
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

たとえば、その中小企業が、より大きな企業グループや取引ネットワークに入っていたとします。LANでつながっている、あるいは業務上のシステムが連携している。そうすると、セキュリティーの弱いその一社を突破口にして、もっと大きな相手に入り込むことが可能になります。

実際、サイバー攻撃でも同じことが起きています。大企業本体は守りが堅くても、取引先や関連会社の守りが弱ければ、そこから入られてしまうのです。

そして怖いのは、何もハッキングだけが侵入手段ではないということです。もし社員がうっかり暗証番号を教えてしまったり、机の中にメモを残していたり、パソコンのログイン情報を簡単に見られる状態にしていたら、サイバー攻撃をしなくても「正式に」入れてしまう。

つまり、技術の話だけでなく、人の話でもあるのです。

会社を買えば“合法的に技術を盗める”

もっと大胆な動きもあります。それが企業の買収やM&A(吸収・合併)です。

技術だけを盗もうとすると、外事警察も動きやすい。誰が誰に何を渡したのか、持ち出しの経路も追いやすい。しかし、最近では、技術を抜くのではなく、会社ごと買ってしまうやり方が増えているのです。

・後継者がいない
・経営者が高齢になっている
・経営そのものも厳しくなっている

そうなると、買ってくれる相手に譲るというのは、経営者から見れば自然な判断です。従業員も残る、会社も続く、技術も消えない。一見すると救いに見えます。

ところが、その買い手が外国資本の影響下にある会社だった場合、話はまったく変わってきます。

会社を買収した後で、たとえば上海支店などをつくり、そこに技術を移してしまえば、それはもう単なる社内の移転に見えてしまう。技術だけを国外に持ち出したら規制されるようなものでも、会社ごと買われてしまえば、「正当なビジネス」の顔をして出ていけるのです。