財務長官の対日要求は実は理にかなっている

経済学者として、運がいいときは、私は国際的な学者の集まりで自分の研究を発表する機会をときおり与えられた。さらに幸運なことには、そのうち何度かはレマン湖を見下ろす美しい会場だった。

その発表の場に、いつも姿を見せる一人の経済学者がいた。物静かで思索的、決して論争的ではない男である。彼はニューヨークで私と朝食をともにしたこともある。名前はスコット・ベッセント。現在、ドナルド・トランプ米政権の財務長官を務めている人物だ。

ベッセントは、ジョージ・ソロスが所有するヘッジファンドの運用者として頭角を現した。私が安倍晋三元首相の経済ブレーンに就いたとき、彼はソロスとともに、イェール大学の私を訪ねてきた。彼自身が雑誌で回想しているとおり、私は日本語なまりの英語で、ハンガリーなまりのソロスと彼に向かって、日本経済を立て直すための初期構想を語った。金融緩和はその柱の一つだった。彼はその構想に興奮を覚えたと書き残している。

(文=浜田宏一 写真=時事通信フォト)
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